名器、その解釈(Technics SP10の場合・その6)
ヤマハのコントロールアンプCIが登場したのは1975年。
私がCIというコントロールアンプの存在を知ったのは、1976年12月。
この間に、コントロールアンプは機能を省略する方向に流れつつあった。
そういうなかでのCIの存在は、独特であった。
薄型のコントロールアンプが主流になりつつある中で、大きな筐体のCI。
筐体が大きければフロントパネルの面積も広い。
そのフロントパネルには、ツマミがぎっしりと並んでいた。
メーターもついていた。
ペアとなるパワーアンプのBIのシンプルなフロントパネルと、実に対照的なCIのフロントパネルであり、
よけいにCIの多機能ぶりが際立っていたともいえる。
ちなみにCIとBIを組み合わせると、信号経路の半導体はすべてFETで構成されることになる。
当時、こういう構成のセパレートアンプは存在してなかったはずだ。
テクニクスのSU-A2が登場してきた時、
テクニクスがヤマハと張り合って、より多機能なコントロールアンプを出してきた──、
とまず思ってしまった。
CIでも、ほとんどの人が使わない機能がいくつか出てくる、と思う。
そのCIよりも多機能であることが、ほんとうに必要なのだろうか。
そう考えてしまうと、SU-A2はテクニクスのCIに対する意地のようなものが、どこかにあるような気がしてしまった。
これが1977年当時の私の受けとめ方だった。