オーディオマニアとして(その10)
高城重躬氏という人がいた。
若い人は知らないだろうが、私が「五味オーディオ教室」を読んだころは、
低音コンクリートホーンをベースにしたオールホーンシステムを構築したことで知られていた。
私よりも古いオーディオマニアの人なら、五味先生との論争を読まれている。
私が「五味オーディオ教室」と出逢ったころは、その野論争は終熄していたが、
それでもなにかあったんだろうな、ということは伝わってきていた。
高城重躬氏はオールホーンシステムだけでなく、
リスニングルームにスタインウェイのグランドピアノをいれられていることでも知られている。
このスタインウェイを録音して、その場で再生して、という意味での原音再生を目指されていた。
スタインウェイだけではない。
鈴虫の鳴き声を録音して、スピーカーユニットであるゴトーユニットの改良にも関係されていた。
高城重躬氏がやられていたオーディオは、
五味先生がやられていたオーディオとは異るところがある。
五味先生は自分で録音した音源を再生されているわけではない。
誰かがどこかで録音したものを、自分のリスニングルームで再生することに血道をあげられていた。
高城重躬氏ももちろん市販されているソフトも聴かれていたであろうが、
少なくとも高城氏が書かれた文章を読むかぎりでは、音の改良に使われるのは、自身で録音されたものである。
だから、五味先生と高城氏、ふたりの立っているところは、同じオーディオという言葉で括れる範囲であっても、
ずいぶんと違うところである。