試聴ディスク考(その9)
具体的な試聴記とは、いったいどういうものなのか。
インターネットでみかけるのは、試聴機材について述べていること。
できればケーブルについても、何を使ったかを書いている。
それから試聴ディスクのタイトル(できればレーベル、CD番号も)、
そのCDのどの曲を聴いたのか、
その曲のどの部分が、こう鳴った、ときちんと書いてあるのが、具体的な試聴記ということになるようだ。
どんな試聴機材だったのかは、目安にはなる。
だが、あくまでも目安程度にとどまる。
そこで、それらの試聴機材がどういうふうにセッティングされ、どんな調整が施されているのか、
そういったことまではわからないし、
仮にそういった細かな事柄まで書いてあったとしても、そこでの音が誌面から聴こえてくるわけではない。
読んでいて、あまりにもおかしな(不思議な)試聴記だと、
いったいどういうシステムで聴いたのか、と気になるけれど、
まともな試聴記であれば、試聴機材については、あっ、こういうシステムで聴いたんだ、程度の認識である。
それから試聴ディスクに関しても、このディスクの、この曲の、この部分が……、と書いてあるのは、
ステレオサウンド 44号、45号で黒田先生が試みられた試聴記と同じではないか、と思う人がいよう。
似ているといえば似ているけれど、いわゆる似て非なる試聴記ということになる。
そこに気づかずに、試聴記を読んでいて、
これは具体的だから信用できる、
具体的な試聴記を書く人だから信用できる、は、
単に一見わかりやすそうに見えるだけで、実のところ、具体的なことはほとんど書かれていないことが多い。