組合せのこと(その3)
黄金の組合せなんていわれているものは破鍋に綴蓋的組合せ、という人もいる。
このことを完全に否定はしないけれど、いったいいつの時代のことなのだろうか、と聞き返したくなる。
たとえばタンノイのIIILZにラックスのSQ38Fの組合せは、黄金の組合せと呼ばれていた。
どちらもかなり昔のスピーカーとアンプではある。
いまのアンプやスピーカーと比較すれば、欠点は少なくない。
個性も強い、といえるアンプとスピーカーであり、その組合せだから破鍋に綴蓋的だろうか。
そういう消極的な組合せを、黄金の組合せと呼ぶだろうか。
誰がいいはじめたのかはわからない。
おそらく黄金の組合せと名づけた人は、
積極的な良さを、この組合せに見出したからこその「黄金の組合せ」だったはずだ。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」に登場するオーディオ機器は、
IIILZ、SQ38Fよりも新しい世代のモノばかりであり、ここには破鍋に綴蓋的な組合せと思われるものはない。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」は1976年12月に出ている。
そろそろ40年前のことになろうとしている。
そういう時代にも破鍋に綴蓋的組合せはなかった。
1960年代までさかのぼれば、破鍋に綴蓋的といえる組合せはいくつかあったであろう。
そういう組合せを、誰が熱心に読むだろうか。考えればすぐにわかることだし、
熱心に読まれないものを誰が積極的につくるだろうか。