ハイ・フィデリティ再考(その13)
五味先生がバイロイト音楽祭のエア・チェックに使われていたルボックスのA700は、688,000円している。
テレフンケンのM28AではなくM28Cは1,300,000円という価格がついていた。
スチューダーのC37の価格は不明だが、C37の後継機といってよいA80/VU MKIIが3,300,000円、
これと同格のアンペックスのATR100が4,000,000円(価格はいずれも1977年のもの)、
どちらもソリッドステート仕様であり、C37とは登場時期が異るためはっきりといえないが、
C37もこれらの機種と、ほぼ同等の価格も、もしくはさらに高価だったのかもしれない。
これらのデッキによって録音されたテープは、いったいなんなのか。
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答はすぐ返ってきた。たいへん明確な返答だった。間違いなしに私はオーディオ・マニアだが、テープを残すのは、恐らく来年も同じ『指輪』を録音するのは、バイロイト音楽祭だからではない、音楽祭に託してじつは私自身を録音している、こう言っていいなら、オーディオ愛好家たる私の自画像がテープに録音されている、と。我ながら意外なほど、この答は即座に胸内に興った。自画像、うまい言葉だが、音による自画像とは私のいったい何なのか。
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「音による自画像」という答を出して、こんどは「音による自画像」について、また自問されている。