マルチアンプのすすめ(その33)
HIGH-TECHNIC SERIES-1の瀬川先生の文章を読みながら考えていた疑問は、この点である。
音色のつながり、である。
なぜJBLの3ウェイ以前のシステムで、音色のつながりがうまくいかなかったのか。
ウーファーからトゥイーターまでのそれぞれのユニットのメーカーが違うためだけだったのか。
スペンドールのスピーカーも、KEFのLS5/1Aも、ロジャースのPM510も瀬川先生は高く評価されていた。
HIGH-TECHNIC SERIES-1を読んでいた時の仮の結論として私が思い至ったのは、
それはマルチアンプだからなのかもしれない……、だった。
理屈の上ではマルチウェイのスピーカーシステムで、
すべてのユニットを内蔵のLCネットワークで分割して、という構成よりも、
ウーファーと、その上の帯域を分けたバイアンプ、
上の帯域もLCネットワークを排除して、すべてのユニットとアンプの間にネットワークを介在させないほうが、
ユニットの素性、性能も、よりストレートに活かされる、と考えがちだし、間違ってはいない。
けれどそれぞれのユニットの素性、性能がよりストレートに活かされる(出てくる)ということこそが、
スピーカーシステム全体の音色のつながりを損なう要因となるのではないか。
とすれば、メーカーは同じであっても、
ウーファーはコーン型、中高域はホーン型となると、
よく出来たLCネットワークでは音色のつながりが得られても、
マルチアンプにした時点で、音色のつながりは失われる、とまではいかなくとも損なわれるかもしれない。
そう考えていくとステレオサウンド 47号の五味先生の文章にも、無理なくつながっていく。
これがHIGH-TECHNIC SERIES-1、47号を読んでいたころ(1978年ごろ)に、考えていたことである。
もちろん、このときマルチアンプを自分でやっていたわけではない。