趣味のオーディオとしてのカタチ(その9)
こんな人がいた。
「4343よりも4333がデザインがいい」
同意はできないけれど、これだけなら「あぁ、この人は4343よりも4333が好きなんだな」と理解できる。
デザインの良し悪しを好き嫌いだけで判断している人だと理解できる。
けれど、彼は続けてこういった。
「4343よりも4333の方が、いい音で鳴るからデザインがいいんだ」と。
彼がデザインについてあれこれいうのは、音がいいか悪いかでの判断であって、
音が悪ければ、どんなに優れたデザインであっても、それはひどいデザインということになる。
彼はいかにも自信をもって、そういった。
彼にとって、これは絶対に揺るがない正論であって、これ以外にデザインを評価することはできない。
彼の、この主張に納得したり同意する人がいるのか。
彼は「4343よりも4333の方が……」といった時点で、
彼自身がオーディオにおいて未熟であることを告白していることに気づいていない。
気づいていないからこそ、自分は正しいことをいっているんだ、からこその彼の虚勢である。
こういう人は少なからずいる。
不思議なのは、4343がいい音で鳴らない、といった時点で、
4343をうまく鳴らすことができなかった、と白状していることに気づいていない点である。