LINN EXAKTの登場の意味するところ(その8)
dbxの20/20が自動的にフラットに周波数特性を整えてくれても、
実際にそのまま音を出したところで、それで終りというわけではなく、
20/20が、いわば提示した音をベースにして、聴き手がさらに細かな調整を加えていく。
すべてを機械まかせなわけではない。
にも関わらず、粋がっていた私は、なんとなくではあったけれど、
20/20を無視するようなところがあった。
なにもかも自分の手でやらなければ、というのは、
マニアとして当り前のこととして受けとめられがちであり、
なにかオートマティックなものを使うものならば、マニアとしての濃度が薄まってしまうような、
そんな感じがどうもあるように感じてしまう。
それは既製品などを使っていては、マニアではない、という人と同じではないだろうか。
自作をやっているすべての人がそうではないことはわかっている。
でも、ごく少数ながら、自作こそがマニアとしての究極の手段であり、
それ以外はいわば妥協の産物とでもいいたがっている人がいないわけではない。
でも、そういう人でも、結局は部品という既製品を購入しているわけである。
トランジスターや真空管、抵抗やコンデンサーといった部品を購入している。
こういう部品を自作しているわけではない。
そこまで自作しているのであれば、ごく一部の自作マニアの主張にも説得力はあるけれど、
実際のところ、そんな人はどこにもいない。
どこかで誰かの手を借りているからこそ成立するのは、
なにもオーディオの世界だけではない。
ならば20/20の自動調整の力を借りて、あるところまで調整して、
それから先は自分の手で行うことは、何も恥じることではない。