prototype(その5)
ダイヤトーンの水冷式のプロトタイプの展示から、
一、二年後だったか、ヒートパイプを採用したアンプが、国内メーカー数社から登場した。
ヒートパイプとは熱伝導率の高い銅パイプの片側にヒートシンク、
その反対側に出力トランジスターを取り付けられるようになっていた。
出力トランジスターがヒートシンクに直に取り付けられるわけではないので、
複数の出力トランジスターをきわめて接近させて配置することができるようになり、
複数個使用による配線の延長の問題がなくなる。
ヒートパイプが登場する一、二年前から出力トランジスターの広帯域化がはじまっていて、
この手のトランジスターの特徴を発揮するためにも、
ドライバー段から出力トランジスターまでの配線はできるだけ短い方がいい、ということも関係していたはずだ。
ヒートパイプはパワーアンプのコンストラクションをある程度変えるまでのパーツであったけれど、
割と早くにオーディオでは使われなくなっていった。
理由は単純で、ヒートパイプを使うとあまりいい結果の音が得られない、ということからだった。
電気的な配線としての従来の大型ヒートシンクよりも有利にも関わらず、なぜ? と思われる方もいるだろう。
それはヒートパイプの作りにあった。
ヒートシンク部分が、薄い金属で作られていたことが、その原因だといわれた。