トランスから見るオーディオ(その19)
トランスそのものはバンドパスフィルターである。
低域も高域も適度なところから下もしくは上の帯域はなだらかにカットされる。
伊藤先生の300Bシングルのアンプに搭載されていたトランスは、後期のモノはパートリッジ製を、
BTS規格のケースにおさめたものだが、
それ以外はマリック製のトランス(日本製)だった。
マリックのトランスを設計しつくられていた松尾氏は、
トランスはフィルター理論によって設計されなければならない。
けれど日本のトランスの多くは、そうではない。
そう言われていた、ときいている。
松尾氏が亡くなられて、伊藤先生の300Bシングルはトランスが変ったのである。
トランスはフィルター理論で設計。
つまりはロスを少なくしていくとトランスの通過帯域は狭くなる。
帯域を広くしていくと、ロスは増えていく。
いわば山の形をしている、どの部分を使うかによって通過帯域が決ってくるし、
その山の中心周波数がどの値に設定されているかも重要である、と。
伝聞とはいえ、信用できる人からの話なので松尾氏の考えとはそう大きくは違っていないはずだ。
そして中心周波数は、いわゆる630Hzあたり。
20Hzと20kHzを掛け合わせた値、40万。その平方根の値を中心周波数としなければならない、ということだ。