Date: 11月 23rd, 2013
Cate: 「スピーカー」論
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トーキー用スピーカーとは(その3)

トーキー用のスピーカーは、セリフの明瞭度が高い。
これが最大の特長だといわれ続けてきた。

映画ではさまざまな音が使われる。
音楽が鳴るシーンもあれば、音楽がまったく鳴らないシーンもある。
音楽が、映画の中の音の主役となることよりも、
ずっとずっとセリフが、映画の中の音の主役であることが多い。

セリフが明瞭に聞こえ、聞き取りやすくなければ映画のストーリーが観客に伝わらなくなることがある。

30年以上前、上京して映画館に行って感じていたことは、
意外にもセリフの明瞭度が悪いところがある、ということだった。

ずっとセリフだけははっきりときこえるものだと思っていたからでもあり、
田舎町の映画館よりも東京の映画館の方が設備も立派だし最新のものだから、という、
こちら側の思い込みもあった。

洋画だと字幕がある。だからあまり気づかなかった。
けれど邦画、それも古い作品を、
名画座ではなくロードショー館で観ていて、セリフがじつに聞き取りにくかったことにびっくりした。

邦画だから字幕はない。
だからセリフは耳だけが頼りなのに、
その耳にはいってくる情報の質がきわめて悪かった。

けれど、これは当然だったのかもしれない。
すでに時代はトーキーという言葉を使ってはいなかった。
トーキー用のスピーカーではなくなっていたのだろう。

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