岩崎千明氏と瀬川冬樹氏のこと(その10)
ステレオサウンド創刊号に載っている瀬川先生の「私のスピーカー遍歴」。
この記事の扉には、自作の3ウェイシステムの前方の床に、いくつものスピーカーユニットを並べて、
その中央に瀬川先生が写っている写真が使われている。
自作のスピーカーシステムは、市販品のエンクロージュアを一日がかりで補強し、吸音材を増したものに、
パイオニアの15インチ口径のPW38Aをおさめられている。
「私のスピーカー遍歴」では、
「400c/sまで持たせるもはや中音域の鈍重さがいら立たしく、一日も早く、同じJBLのLE15Aを試みたい」
と書かれている。
このエンクロージュアの上には、JBLの375にハチの巣(537-500)を組み合わせたスコーカー、
トゥイーターの075とネットワークN7000が載っている。
これが3ウェイシステムの概要となるわけだが、
375のとなりには、ジョーダン・ワッツのA12が置かれている。
このA12のことは「私のスピーカー遍歴」でも触れられている。
*
ジョーダン・ワッツに目をつけた。
はじめに購入したのは旧型のそれもユニットだけ。手近なバッフルや間に合わせの箱では期待した音がどうしても得られない。そこでエンクロージュア入りの〝MINI12〟買ってみて驚いた。ユニットだけからは想像もできなかった見事な音で、小型の箱だが壁にぴったり後をつけて置くと低音も思ったよりよく出てくる。ユニットも新型のMKIIになっていて、外観・仕上げも美しくなり、音質も改善されていた。これに意を強くしてすぐにひと廻り大型のA12を購めた。これは位相反転型で低音がさらによく延びていて、バス・ドラムの音なども意外なほど豊かに再現する。しかしなによりも音全体の作り方に、AXIOM80と共通したE・Jの主張が感じられてすっかり気に入ってしまった。しばらくのあいだはA12とMINI12をパラレルで中音に使い、低音と高音に別のスピーカーを加えて使った。
現在はA12を単独に、本来の全音域用として鳴らしているが、独特の味が捨て難く、メインスピーカーとしているJBLに次いで最も頻繁に音を出すスピーカーである。
*
ジョーダン・ワッツのA12は、QUADの管球式の22 + IIで鳴らされていた。