日本の音、日本のオーディオ(その35)
ベーゼンドルファーがスタインウェイとは違うこと、
ヤマハのピアノとも違うこと、
それにスタインウェイのピアノとヤマハのピアノに共通するところは、
録音されたものを聴き続けていれば、自然と気がついていくことでもある。
この三つのピアノを、同じ場所に同じ時に比較して聴いた経験はない。
あくまでも録音されたもの、それにコンサートホールに脚を運んでそこで聴き得たことからの判断である。
それでも、いまははっきりとそういえるのは、
ベーゼンドルファーから出たスピーカーシステム、VC7を聴いているからである。
いまはベーゼンドルファー・ブランドからBrodmann Acousticsに変り、
残念なことに、この豊かな美しい響きをもつスピーカーシステムは輸入されなくなってしまったが、
VC7の音、というよりも響きに魅了された人ならば、
このVC7という、現代スピーカーシステムの技術的主流から見た場合に、
やや異端の構造・形式をもつ、とみえるだろうし、
実際にVC7の音は、いまのところ、他に同種の音・響きのものがあるようには思えないところももつ。
VC7というスピーカーシステムは、
ベーゼンドルファーの名前で登場したことが、その音を、だから表している、といえる。
そして、VC7の音・響きを聴けば、ベーゼンドルファーのピアノが、
スタインウェイ、ヤマハのピアノとはあきらかに違うところがはっきりと意識できるようになる。