オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(その4)
科学を騙るオーディオ関係のウェブサイトに掲載されている文章や、
掲示板で、ケーブルや置き方で音は変化しない、と決めつけている人たちの根拠のひとつに、
あるひとつの要素だけを取りあげて、
その要素が音に与える影響は人間の検知領域よりも下のレベルだから、音の違いはわからない、というものがある。
人間の検知領域は、人によってそうとうに異っていても不思議ではない。
まず、そのことを無視して、平均的なレベルの話をもってきて、決めつける滑稽さがある。
そして、科学的に捉えようとしている人でも、
ひとつの要素単独の影響にしか触れようとしない不十分さがある。つまり徹底していない。
私と同年代、上の世代にとって有吉佐和子氏の「複合汚染」は衝撃的だった。
複数の毒性物質が、相加・相乗作用によって、単独の場合に人間に与える影響の質、
そしてその量が著しく変化するということを、この本によって知らされた。
それぞれの物質の安全基準は、あくまでも単独の場合であって、他の物質と結びつくことで、
ほんのわずかな量でも、思わぬ被害を及ぼす可能性があるわけだ。
オーディオも、複合要素、相加・相乗作用を考慮して当然であるべきなのに、
上述したように、単独の要素のみで語られる(騙られる)ことが多い。
これが「科学」だろうか。もし「科学」としたら、前時代の科学でしかない。