AAとGGに通底するもの(その4)
アデールの「フーガの技法」、2枚のCDを聴きおわったところで、拍手が鳴り、最初のときは驚いた。
ジャケットには”Live Recording” と書かれているし、ライヴ録音だと感じさせる箇所もないわけではないが、
聴き耽っていたら、そんなことは頭の中から消えていて、いきなりの拍手の音に、ハッとした。
このライヴでの聴取は、みな息を潜めて、ひとつになって聴いている。
別の場所、別の時間にいる、CDの聴き手も、いつのまにか聴取とひとつになっている、とでもいったらいいのだろうか。
拍手の音は、とうぜんだがひとつではない。あちこちから聴こえてきて、
視覚情報のあたえられていないCDの聴き手は、拍手の数の多さから、
こんなにも多くの聴き手がまわりにいたことを、はじめて知る。
この静謐さは、グールドとアデールのバッハに通底しているもののひとつであろう。
これだけではないだろう。まだなにかがあるのだろう……。それを感じとりたくて、今日もまた聴いていた。