黄金の組合せ(その7)
私がAGIの511の音を聴くことができたのは、
瀬川先生が定期的に熊本にあるオーディオ店で行われていた試聴・講演において、である。
そのときの511は、ステレオサウンドでよく見る511ではなく、ブラックパネルの511で、
ずいぶんと印象が違うな、と思うとともに、
ブラックがあったなんて、ステレオサウンドには書いてなかった……、などと思っていた。
試聴が始まり、511の番になったときに、「これは並行輸入品です」と瀬川先生がいわれた。
それも、あえて並行輸入品を聴いてもらいたくて用意してもらった、ということだった。
511は、瀬川先生、井上先生が指摘されているように初期のモデルと、
この試聴が行われたころに輸入されていたモデルとでは、音に違いがあった。
瀬川先生は初期の511の音を評価されていたこともあって、
その音を聴けるということでの並行輸入のブラックパネルの511だった。
音が鳴った。
511の音は、瀬川先生が書かれている通りの、
音楽の持つ表情に鋭敏に反応する生き生きとした鳴り方が魅力、だった。
とにかく聴いていて、楽しい。
この良さが、正規輸入品では薄れてしまっている、ということらしい。
そしてQAUD・405との組合せについても、少し話された。
最初のころは魅力的な組合せだったけれども、
511も405もその後改良されて、必ずしも、いま組み合わせて魅力的かといえば、そうともいえない──、
そんなことをいわれた。
AGI・511との出合いは、こんなだったから、
511ならばブラックパネル、というおもいがずっと続いていくことになる。