598というスピーカーの存在(長岡鉄男氏のこと・その3)
長岡鉄男氏の考え方の基本は(すくなくとも1978年の時点では)、
こうである。
スピーカーの振動板、カートリッジの振動系などの、
いわゆる動く部分に関しては丈夫で軽い方がいい。
これらの振動系を支える部分、
スピーカーではスピーカーユニットのフレーム、
カートリッジではカートリッジ本体のボディなどは丈夫で重い方がいい。
とはいってもカートリッジ自体はトーンアームの先端に取り付けられていて、
カートリッジ本体もまた、トーンアームからみれば動く部分であるから、
カートリッジをむやみに重くするわけにもいかない。
つまり、ここにトータルバランスの考え方が出てくる、というものである。
別冊FMfan 17号の記事はアナログプレーヤーに関することだから、
トーンアーム、プレーヤーのベース、ターンテーブルプラッターなどについても長岡鉄男氏は触れられているが、
そこでもトータルバランスということが出てくる。
そして、こうも書かれている。
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アームは動くものだが、これを支えるサポート回り、ベース、キャビネットは丈夫で重くなければならないし、理想的には無限大の重さがほしいが、ある程度の重さがあれば、それ以上は少々重くしても、トータルの音質に変化はないというところまでくる。
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長岡鉄男氏の求められいてる音の世界に賛同できるどうかは別として、
別冊FMfan 17号に書かれていることは、反論しようとは思わない。
だから、よけいに、その数年後の長岡鉄男氏の行動、
スピーカーユニットやアンプのツマミの重さを量られたことに対して、
トータルバランスは、どこにいってしまったのか、と思ってしまう。
そして「オーディオA級ライセンス」に「重量は、筆者の製品選びの最重要ポイント」と書かれていたということ、
これについても、どういう変化が長岡鉄男氏にあったのだろうか、
もしくはどういう考えがあってのことなのか、と思うわけだ。