日本のオーディオ、これから(その3)
ジムテックが作っていたのはスピーカーシステムばかりではない。
管球式のコントロールアンプとパワーアンプ、それにMM型カートリッジも作っていた。
コントロールアンプのM1はアンペックスのオープンリールデッキAG440のエレクトロニクス部に似ている。
パワーアンプのM100SLはシャーシーのつくりだけでなく、トランスのカバーなど、
明らかにマッキントッシュの管球式パワーアンプの意匠そのままである。
型番は憶えていないが、マランツのModel 500に似たパワーアンプもあったはず。
カートリッジのV-III、V-II ProfessionalはシュアーのM75そっくりである。
ジムテックの技術力がどの程度なのかは、知らない。知る機会もなかった。
実物を見たこともないし、ステレオサウンドでも22号で#1000が取り上げられているだけだ。
私の手もとに22号にはないので、どういう評価だったのかはなんともいえないけれど、
なんとなく想像はつく。
それにしても、と思う。
カートリッジからコントロールアンプ、パワーアンプ、スピーカーシステムまでラインナップとして揃える。
なのにすべて、高い評価を得たモノからの「無断借用」である。
たしかに日本のオーディオの黎明期には、
海外製品をコピーすること(マネ)からスタートしたメーカーはいくつもあった。
ジムテックも、それらのメーカーと同じじゃないか、と思われるかもしれない。
何かに追従するのは日本のメーカーの悪い癖とも、よくいわれていた。
アメリカでマークレビンソンのJC2が登場し話題になった時、
日本のメーカーからいっせいに薄型シャーシーのコントロールアンプがいくつも登場した。
598のスピーカーシステムにしても、その傾向は確かにある。
それでもジムテックのやり方は、
1970年代という、日本のオーディオブームのただ中でこういうことをしてしまうということ、
岩崎先生が指摘されているように自主性・主体性の、あまりな欠如が問題である。