Date: 5月 8th, 2013
Cate: 岩崎千明, 瀬川冬樹
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岩崎千明と瀬川冬樹がいた時代(その1)

5月31日に岩崎先生の「オーディオ彷徨」が復刊され、
瀬川先生の著作集が出るのだから、このことは書いてもいいと判断したことがある。

私がステレオサウンドで働くようになったのは、1982年1月。
瀬川先生が亡くなって二ヵ月後のこと。
ステレオサウンド試聴室隣の倉庫には、
瀬川先生が愛用されていたKEF・LS5/1A、スチューダーA68、マークレビンソンLNP2があった。

そういうときに私はステレオサウンドで働きはじめた。

入ってしばらくして訊ねたことは「瀬川先生の遺稿集はいつ出るんですか」だった。
編集部のI先輩にきいた。
どうみても、その編集作業にとりかかっている様子はどこにもなかったし、
そんな話も出てきていなかったから、不思議に思いきいたのだった。

I先輩の返事は、当時の私にはたいへんショックなものだった。
「出ないんだよ。ステレオサウンドのルールとして筆者一人一冊と決っているから。
瀬川先生はすでに『コンポーネントステレオのすすめ』がもう出ているから……」

確かに「コンポーネントステレオのすすめ」は出ている。
しかも改訂版も出て、「続・コンポーネントステレオのすすめ」も出ている。
だからといって、なぜ出さないのか。
そんなことを誰が決めたの? そんな決まり(これが決まりと呼べるのだろうか)は破ればいいじゃないか、
ステレオサウンドにとって瀬川冬樹とは、そんな存在だった?──、
とにかくそんなことが次々と頭に浮んだものの、何も言わなかった(言えなかった)。

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