Noise Control/Noise Designという手法(その36)
ノイズが音の感触を生んでいるかもしれない、と、この項の(その5)で書いた。
2010年2月27日のことだから、もう三年が経つ。
その三年のあいだに、いろいろ書いてきて、この項でもマッキントッシュのMC2300のことを中心に、
マッキントッシュのアンプのツマミの変化についても書いてきて、
ノイズが音の感触に直接関係していることは、もう実感へと、確信へと変ってきた。
そして、ノイズはいくつかの意味での「背景」でもあり、
結局のところ、ノイズがまったく存在しない(zero-noise)再生音は、
それはもう再生音ではなくなってしまう気もしている。
別項で書いている「続・再生音とは……」、
ここで生の音になく再生音にあるもの、
おそらくいくつかあるであろう、これらの中でもっとも重要なのがノイズであり、
ノイズは時として信号を補う存在でもある。
REPLY))
プロツールスなどでのデジタルミキシングの現場では、アナログミキシングコンソールのクロストークや非線形歪をデジタル的にシミュレーションする技術が非常に高い評価を受けているのはご存知でしょうか。違う場所や条件で録音された音を音楽的に自然に混ざって聞こえるようにするのには、ノイズを含めた各チャンネルの音をある程度均一な質感にする必要があるということです。音楽がステレオチャンネルに纏められてからは、マスターテープ、マスタリングスタジオでのEQ、リミッター、コンバーターまたはカッティングマシーンなどの作業でノイズと歪が付加されることでそのアルバム全体の質感は均一化され、さらにコンシュマーサイドの音楽再生でさらにアコースティックまで含めたあらゆる歪やノイズが付加されることで、その人の持つ音楽ライブラリー全体の質感が均一化されます。つまり音の質感を均一化すること、まあオーディオ的には味付けですが、それがミキシング、マスタリング、オーディオの各段階でいやおうなくまたは積極的に行われているというのが事実であると考えると、味付けするかしないか、という選択ではなく、どう味付けするのか、つまりどの方向で均一化したいのか、というのがすべての音楽録音再生のプロセスのテーマであるという考えにはあまり異論がないのではないかと思っています。
しかし、世の中のオーディオファイルと言われている人の中には、ある程度の均一化はしかたないが制作側の意図を尊重して味付けは出来るだけ避けるべき、というスクールと、逆に積極的に均一化することこそがオーディオ美学の実現と考える人たちがいるのは面白いところですね。どちらにしても、ノイズと一口に言っても例えばテープヒスと真空管アンプのノイズでは全く違う質感のノイズですから、そういう質感の違いまで考えると、ノイズを単なるステレオタイプの悪役として認識してしまうのは間違いで、より積極的にどうノイズをコントロールしていきたいのかと考えるのは重要だと思います。