続・再生音とは……(その7)
アトムは、天馬博士が交通事故でなくなった飛雄のかわりとして、
姿形までそっくりに、いわば飛雄を甦らせそうとしてつくったものである。
つまりアトムは飛雄に対して、非常にハイフィデリティ(高忠実度)なロボットしてつくられたとみれると思う。
飛雄が、オーディオでいえば生の音(原音)ということになり、アトムが再生音にあたる。
アトムを天馬博士は最初トビオと呼んでいた。
けれどトビオは成長しない。
トビオ(アトム)はロボットだから成長しない、
改良を加えない限り、最初の状態のままである。
でも実際にはアトムの内面は成長していっている。
だからアトムが成長できなかったのは、飛雄そっくりにつくられた姿形ということになる。
天馬博士がトビオの身長を測るシーンがあった、と記憶している。
何度測っても、トビオの身長は1mmたりとも変化しない。
理由はこれだけではないが、天馬博士はトビオをサーカスに売り払う。
トビオは飛雄の代りにはならなかった。
すくなくとも天馬博士にとってはそうだったことになる。
不思議なのは天馬博士は飛雄そっくりの、
飛雄の記憶をもって、飛雄として成長していけるものとしてのトビオをつくったのだろうが、
トビオ(アトム)には、飛雄にはない能力が、科学の粋を結集して授けられている。