賞からの離脱(その17)
ステレオサウンド 66号は1983年に、
“State of the Art”賞がはじまった49号は1978年に出ていて、
その間は5年あるわけで、これだけの期間があっても、”State of the Art”賞について、
岡先生にたずねる読者とはいったいどういう人なのだろうか。
ステレオサウンドのState of the Artの選考委員のオーディオ評論家の方たちは、
オーディオフェア、販売店などで試聴会、講演などをやられる。
そこで読者から質問されることもある。
けれど、1983年ごろ、その数年前ぐらいから、
岡先生はほかの方々よりは、そういうことをあまりやられていなかったと記憶している。
この記憶に間違いなければ、岡先生に「あの賞の意味はどういうことですか」とたずねる人というのは、
オーディオ業界の人なのではないか、
と私は、ステレオサウンド 66号の岡先生の文章を読みながらおもっていた。
オーディオ業界の人すべてがステレオサウンドを熱心に読んでいるとは、私にはおもえない。
ひとりのオーディオマニアとして、熱心な読者の人もいれば、
あくまでも仕事としての読者の人もいるし、そういう意識の人の中には、
自分のところの製品のところだけ、もしくはライバル機種のところだけを読む人もいる。
なかには、ほとんど読んでいない人もいたのではなかろうか。
ステレオサウンドを読んでいるのかどうかを直接きいたわけではない。
けれど話してみれば、読んでくれている人かそうでないかはわかってくる。
おそらく岡先生に「あの賞の意味はどういうことですか」」ときいてきた人たちは、
ステレオサウンドをほとんど読んでいなかった人、
読んでいたとしても、肝心の「ステート・オブ・ジ・アート賞の選考にあたって」を読まずに、
自分が所属している会社が取り扱っている製品が賞に選ばれているかどうかにしか関心のがない、
──そういう人であれば、5年経とうが10年経とうが「あの賞の意味はどういうことですか」ときくのだとおもう。
こういう人たちはオーディオ業界の人にばかりいるのではない。
オーディオ業界とは関係のない読者の中にも、賞の意味よりも自分の使っている製品が選ばれているかどうか、
それにしか関心のない人もいる。