prototype(その2)
オーディオフェア、オーディオショウで発表された新製品は、
遅かれ早かれ市場に出てくる。オーディオ雑誌の新製品の紹介のページでも取り上げられる。
だから数ヵ月まてば、よりくわしいことを知ることができる。
その意味では、オーディオフェア、オーディオショウに足を運んでいるのであれば、
新製品をいち早くみて聴くことができるのは楽しみであるけれど、
会場に行けない人にとっては、オーディオ雑誌にフェアやショウの記事が載るころには、
新製品の多くは同じ号、もしくは次号あたりで新製品として取り上げられているのだから、
行けない者(つまり私)の興味は、
オーディオフェアでしかお目にかかれない参考出品という名のプロトタイプにあった。
このプロトタイプは多くの場合、製品化されていない。
もちろんprototypeには試作品、原型という意味があるから、
製品の試作品としてのプロトタイプもあるわけだが、私が強い関心をよせるのはそういうプロトタイプではなく、
原器としてのプロトタイプであったり、実験用としてのプロトタイプであったりする。
この手のプロトタイプで一般的に知られるのは、トーレンスのReferenceである。
Referenceはトーレンスが、実験用・研究用として開発した、製品化のことを考慮していないモノを、
あくまでも参考出品として西ドイツでのデュッセルドルフ・オーディオフェアに展示。
売るつもりなどまったくなかったモノに、多くのディーラー、オーディオマニアが注目し、問合せが殺到し、
製品として世に出ることになったことは、瀬川先生がステレオサウンド 56号に書かれている通りである。
このトーレンスのReferenceに相当するモノが、
日本のオーディオメーカーから毎年のようにオーディオフェアには参考出品されていた。
いまはオーディオ雑誌の、
オーディオフェアの記事に載った小さな写真でしか見ることのできないプロトタイプがいくつもあった。