世代とオーディオ(その6)
カセットテープの半速録音・再生があるならば、とうぜんその逆の倍速仕様のデッキも、
ナカミチの680ZXと同時期に、マランツから登場していた。
SD6000である。
メタルテープもすでに登場していたので、メタルテープと倍速録音・再生は、
オープンリールテープの領域に迫ろうとするものであった、はず。
SD6000が登場した1979年は、私はまだ高校生。
聴く機会はなかった。
メタルテープでの倍速、どんな音がしていたのだろうか。
カセットテープの「枠」をこえようとしたエルカセットよりも、
安定感のある音を実現していたのだろうか。
SD6000の発表には、少しは関心をもっていたけれど、すぐに薄れてしまった。
SD6000の筐体はかなり厚みのあるものだった。
当時のLo-Dのカセットデッキと同じように、見た目の印象がお世辞にもスマートとはいえない出来だった。
私の感覚ではカセットデッキだから、もう少し薄くまとめてほしい。
カセットテープ、カセットデッキに入れ込んでいないだけに、音質、性能最優先という選択は私にはなかった。
ヤマハやテクニクスなどが倍速仕様のデッキを開発してくれていたら、
私のカセットデッキへの思い入れもすこしは変っていたかもしれない。
けれど、ナカミチの半速同様、この倍速も消えてしまった。
マランツの場合も理由はナカミチと同じであろう。
日本マランツがフィリップス・グループの一員となるのは翌年のこと。
だからこそ出すことのできた仕様でもある。