世代とオーディオ(その7)
私はカセットデッキには夢中にはなれなかった。
いまはあまり聞かなくなったけれど、以前は、サラ派、ヒモ派という、
オーディオマニアをいわば分類するような言葉があった。
サラ(皿)派はディスクをメインのプログラムソースとする人たち、
ヒモ(紐)派はテープをメインのプログラムソースとする人たちのことであって、
ここでいうヒモはカセットデッキ・テープのことではなく、オープンリールテープ・デッキのことを指している。
1970年代のステレオサウンドに載っている広告の中には、
オープンリールテープのミュージックテープの広告もあった。
2トラック38cmのミュージックテープともなると、1本1万円を超える価格だったりした。
私はあきらかにサラ派だったが、それでもオープンリールテープ・デッキには、
カセットテープ・デッキとは比較にならぬほど強い関心があった。
中学生・高校生のころ、いつかはEMTの930st、927Dstと夢見ていたわけだが、
オープンリールデッキに対しても同じで、いつかはスチューダーのA80とか、
そこまで大型のコンソール型でなくてもスチューダーのB67、ルボックスのB77、PR99など、
欲しいと夢見ていたモノはいくつか、こうやってすぐにあげられる。
もし、これらのどれかを買ったとして、いったい何を録音するんだろうと自問したくもなる。
ミュージックテープを買ってきて再生するだけでは、テープデッキの機能の半分しか使っていないことになる。
ならば再生専用のデッキをどこか作ってくれないだろうか、とも考えたこともある。
でもテープデッキは、やはり録音して、再生する器械である。
そういう器械を、ただ再生するためだけで使うのは、宝の持ち腐れという気がしないでもない。