世代とオーディオ(その8)
ステレオサウンド 38号といえば、古くからの読者にとっては、
すぐに特集記事がなんであったのかすぐに浮ぶ人が多い、
いわば少し特別な号なのかもしれない。
私の手もとにも、一冊のステレオサウンド 38号がある。
私が買った38号ではない。
私が買った38号は、ずいぶん前に欲しいという人に、
他のバックナンバーもふくめて譲っている。
いま私のところにある38号は、岩崎先生が読まれていた38号である。
この38号を含めて、10年前に岩崎先生のご家族の方から譲っていただいた。
数冊あったステレオサウンドの中で、38号だけがくたびれていた。
つまり他の号より、何度も読み返されたことによる、本のくたびれ方だった。
その38号を手にとって、岩崎先生も、38号をくり返し読まれていたことを確信、実感していた。
38号の特集は「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」である。
黒田先生が井上卓也、岩崎千明、上杉佳郎、菅野沖彦、瀬川冬樹、長島達夫、柳沢功力、山中敬三、
8氏のリスニングルームを訪問されての記事である。
当然、誌面にはそれぞれの方のリスニングルームの写真が見開き・カラーで載っている。
ほとんどの方のリスニングルームにオープンリールデッキがある。
オープンリールデッキが写っていないのは、岩崎先生と井上先生のふたりだけ。
瀬川先生のところにはアンペックスのAG440B-2が、
JBL・4341、KEF・LS5/1Aの二組のスピーカーシステムのあいだに鎮座している。
菅野先生のところにはスカリーの280B-2、上杉先生のところにはスチューダーのB62、
山中先生のところにはアンペックスModel 300とルボックスのG36、
長島先生のところにはルボックスHS77、柳沢氏のところにもHS77がある。