ラックス MQ60がやって来る(その5)
左右対称で重量バランスも配慮されているから、
MQ60のレイアウトは、ステレオ真空管パワーアンプとして理想かといえば、
そうとはいえないところが難しいところだし、オーディオの面白さでもある。
MQ60では出力管は出力トランスの前にある。
電圧増幅管は出力トランスと電源トランスに挿まれるように配置されている。
この点が気になる。
ならば出力管と電圧増幅管の位置を変更したら──。
トランスからの干渉を抑えるという点ではいいけれど、
見た目の印象はずいぶんと変化してしまう。
出力管四本がシャーシー前面にあるのと、
トランスに挿まれてしまうのとでは、
多くのオーディオマニアはどちらを選ぶだろうか。
それに出力管をトランスで挿む配置にすると、
出力トランスと電源トランスの距離を、かなり広げることになる。
電圧増幅管と出力管とでは大きさが違うし、発熱量も違う。
そうなるとシャーシーが全体に横に長すぎるプロポーションになるし、
うまく処理しないと間が抜けた印象にもなりがちだ。
MQ60は1972年に、無帰還設計のMQ60Cが出ている。
レイアウトはMQ60そのままである。
さらに1978年に、MQ68Cが登場した。
MQ60とMQ60Cを一つにまとめたといえるアンプで、
NFB量を0dBと16dBにきりかえることができる。
MQ60のレイアウトを継承したアンプは、ここで一旦途切れるが、
1980年代にはMQ88でふたたび採用され、現行機種のMQ88uCもそうである。
そういえば、いま書店に並んでいる管球王国 105号でMQ88uCが取り上げられている、とのこと。
その記事で写真の説明文に、
MQ88uCのデザインは、1969年発売のMQ66のデザインを継承している──、
そんなことが書かれている、と友人から連絡があった。
友人は、「MQ66なんて、ラックスの製品にはないよね」という確認も含めてだった。
私は管球王国 105号をまだ見てないけれど、
ほんとうに説明文にMQ66とあるのだとしたら、MQ60の間違いである。