ラックス MQ60がやって来る(その4)
MQ60は、1969年に登場している。
当時、MQ60のラックス製品中の位置づけはどうだったのかは知らない。
私がオーディオに興味を持ち始めたのは1976年秋からで、
そのころのラックスの真空管パワーアンプのラインナップを眺めると、
MQ60は中級クラスの製品であった。
完成品のラックスだけでなく、ラックスキットにおいても中級品といえる。
A2500がKMQ60よりも安価だったが、それ以外の製品はすべてKMQ60よりも高価だった。
そんななかにあって、MQ60(KMQ60)の真空管、トランス類のレイアウトは違っていた。
6RA8プッシュプルのA2500、EL34プッシュプルのA3500、8045GプッシュプルのA3600、
6336AプッシュプルのKMQ80、いずれとも違うレイアウトの採用である。
A2500、A3500、A3600、これら三機種のレイアウトは共通している。
トランスという重量物を、シャーシー両端に配している。
シャーシーの片側に出力トランス、
その反対側に電源トランスとチョークコイルと、
中央の真空管群をはさむようなレイアウトである。
マイケルソン&オースチンのTVA1も基本的に、同じレイアウトである。
KMQ80はトランス類をシャーシー後方に横一列に配している。
つまりラックス(キット)を含めて、ステレオ仕様の真空管パワーアンプのなかで、
MQ60のレイアウトはこれだけが左右対称となっている。
シャーシー左右両端に、出力トランス、
シャーシー中央に電源トランスなのだが、
出力トランスはシャーシー後方寄りに、
電源トランスはシャーシー前方寄りになっているため、
三つのトランスが横一列に並んでいるわけではない。
トランスという重量物が複数シャーシー上に並ぶ真空管アンプでは、
これまで別項で指摘してきているように、重量バランスヘの配慮が重要となる。
MQ60は、左右対称とともに重量バランスもとっている。
A2500、A3500、A3600も重量バランスはとれているけれど、
左右対称とはいえない。