Archive for 11月, 2009

Date: 11月 4th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その6)

出力段のパワートランジスターは、小さいながらも、振動源のひとつである。
そしてヒートシンクは、一種の音叉的な役割をする。
だから薄いフィンの放熱器のパワーアンプだと、ダミー抵抗を接続して入力信号を加えると、
フィンが音楽信号に応じて鳴くのが、確認できることもある。

Aクラス動作のパワーアンプでは、出力トランジスターに、アイドリング電流をたっぷり流す。
つまり無信号時でも、このアイドリング電流によって、振動を発生させているとみていいだろう。< Bクラス動作では、無信号時では、ほとんどアイドリング電流は流れない。 つまりトランジスターの振動は、ごく小さいと思われる。 Aクラス動作とBクラス動作を比較すると、効率の面ではBクラス動作が優れているが、 スイッチング歪、クロスオーバー歪ということになると、原理的に発生しないAクラス動作ということになる。 だからといって、Aクラス動作のパワーアンプが、音の面で、 Bクラス動作のものよりもすべての面で優れているとは、決して言えない。

Date: 11月 3rd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その5)

チェロからのパワーアンプの第2弾の アンコール・パワー(Encore PowerAmp)でも、
チョーク・インプットは採用されている。

アンコール・パワーのシャーシーにふれてみるとわかるが、
発熱量は、パフォーマンスとアンコール・パワー、それぞれの規模と比例するように、極端に少ない。
おそらく出力段のパワートランジスターにアイドリング電流を、それほど流していない設計なのだろう。

ML2Lが純Aクラス、パフォーマンスは、Aクラス動作領域が広いABクラス、
これらに対して、アンコール・パワーは、純Bクラスといいたくなるほど、
アイドリング電流は少ないものと推測できる。

純Aクラス動作のパワーアンプを理想とするならば、
アンコール・パワーはとんでもないアンプということになるのだが、
ことはそう短絡的に結論を出せるものではなく、
アイドリング電流を抑えることにより、ヒートシンクの存在が、アンコール・パワーにはない。

Date: 11月 3rd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その4)

マーク・レヴィンソンは、チェロを興してからは、電源に対する考え方が大きく変化したように感じられる。
チョーク・インプット方式の採用もそうだが、定電圧電源に関しても、そうである。
ML2Lは、出力段まで定電圧化された電源を採用しているのが特徴だった。

パワーアンプで、出力段の電源まで定電圧化していたのは、それまではテクニクスのSE10000の存在しかなく、
純Aクラスのパワーアンプで、すべて定電圧化するということは、
ここに使われる制御用トランジスターの発熱の分が増すために、非安定化電源のパワーアンプよりも、
放熱に関してはやっかいなこととなり、アンプの規模は必然的に大きくなっていく。
ML2Lの6つあるヒートシンクのうち2つは定電圧電源用である。

もしチェロのパフォーマンスが、出力段まで定電圧電源を採用していたとしたら、
スペースにたっぷりの余裕がある電源部のシャーシー内部は、ヒートシンクで占拠され、
さらに強制空冷用のファンが、アンプ本体部だけでなく、こちらにも取り付けられていたはずだ。

レヴィンソンの、というよりも、チーフ・エンジニアであったコランジェロの考え方の変化によることでもあろうが、
チェロのアンプには、ほぼ全面的にチョーク・インプットが採用されていく。

Date: 11月 2nd, 2009
Cate: 五味康祐

もっともらしいこと

「五味氏の『西方の音』は『さいほうのおと』と読むんですか」といったことを、
先日、ある人が訊ねてきた。

なんでも、あるサイトで、「西方の音」の西方は西方浄土(さいほうじょうど)からとられているため、
「せいほう」ではなく「さいほう」と読むのが正しい、と書いてあったそうだ。
訊ねてきたその人も、別の人からの又聞きなので、どこのサイトなのかはわからない。

私も一瞬、信じかけるくらい、もっともらしい説であるが、読みは「せいほう」で正しい。

「西方の音」の奥付にはルビはないが、
「天の聲─西方の音─」の奥付には、「せいほう」とふってある。
新潮社のサイトでも、「セイホウノオト」とある。

オーディオには、こういう、もっともらしいことが、昔からいくつもあり、
本当のこととして信じられ流布しているものもある。
それらのなかには、害のないものもあれば、そうでないものもあるから、やっかいでもある。

Date: 11月 1st, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その3)

マーク・レヴィンソンによるパワーアンプは、マークレビンソン時代のML2Lでは、
最初は、電源トランスはEIコア型だった。ケースはなかった。
つぎは、うなりを抑えるためにエポキシで固められた。これもケースはなかった。
そして、トロイダルトランスになり、ケースに電源トランスがおさめられるようになった。
ML2Lに次に出たML3Lでは、最初からトロイダルトランスで、もちろんケース入り。

それが、チェロになり、最初のパワーアンプ、パフォーマンスでは、EIコア型にもどり、
ケースもなくなっている。エポキシで固められてもいない。

ケースをなくし、EIコアにもどした理由を、当時、レヴィンソンは、こちらのほうが音がいいため、と語っていた。
たしか、音のために見栄えは無視した、といった類のこともつけ加えていた、と記憶している。