Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 1月 13th, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その1)

JBLの4343は1976年秋に登場した。
来年(2016年)は、40年目である。

1976年中に4343を手にした人はそう多くはないだろうが、
円高ドル安のおかげで4343は価格は下っていった。
それに反比例するように、ステレオサウンド誌上に4343は毎号のように登場し、
特集記事も組まれていった。
ペアで百万円をこえるスピーカーシステムとしては、驚異的な本数が売れていった。

いまも4343を鳴らしている、持っている人はいる。
新品で購入した人ならば、長い人で40年、短い人でも30年以上経っている。
しかもウーファーの2231A(2231H)とミッドバスの2121(2121H)のエッジはウレタンだから、
エッジの補修は誰もがやられている。

それ以外にもリペアは必要となる。
ネットワークの部品も交換されていると思うし、スピーカー端子もバネがダメになることがある。
アルニコマグネットは衝撃に弱いため、減磁している可能性もある。

どんなに大切に使って(鳴らして)いても、リペアをせずにすむわけではない。

これから先もリペアしていくのか、それとも……。

リペア(repair)は、修理する、修繕する、回復する、取り戻す、といった意味をもつ動詞。
リペアと同じように使われる言葉にレストア(restore)がある。
元の状態に戻す、という意味の動詞である。
このふたつと同じように”re”がつく言葉に、リバース(rebirth)、リボーン(reborn)がある。
名詞と形容詞だ。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その3)

JBLのコンプレッションドライバー2441は、日本の折り紙からヒントを得た新型のエッジの採用で、
ダイアフラムだけの違いにもかかわらず、2440よりも高域特性は格段に向上している。

2440(375)はエッジの共振を利用していたため、10kHz以上の再生は無理だったが、
2441(376)ではカタログスペックでも18kHzまでとなっている。
周波数特性のグラフを比較してみても、2440との差は歴然である。

ならば5kHzといわず、10kHz、さらにもっと上の周波数まで2441+2397に受け持たせることもできる。
けれど2445J+2397の指向特性のグラフでは、10kHz、15kHzでの特性は八つ手状になっているのが確認できる。

ときどきJBLが4350、4341で4ウェイにしたのは、最大音圧を高めるためだと勘違いの発言をしている人がいる。
確かに帯域分割の数を増やせば個々のユニットへの負担は軽減される。
けれどJBLが、スタジオモニターとして4ウェイを採用したのは指向特性の全体行きにおける均一化のためである。
これは4350の英文の資料を読まなくとも、スピーカーシステムの問題点を考えればわかることである。

指向特性の均一化ということでいえば2441+2397は10kHzまでは無理ということになる。
2445J+2397のグラフでは5kHZの特性も載っていた。こちらは良好である。

そうなると40万の法則、指向特性の均一化、630Hz近辺でのクロスオーバー、
これらにD130と2441+2397の組合せはぴったりと合致する。
しかもどちらも能率が高い。
80Hzから5kHzは2ウェイシステムとしても、ナローレンジということになる。

だがこれ以上強力なミッドバスとミッドハイの組合せは他にない、ともいえる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・余談)

そういえば、こんな質問をもらった。
マランツのModel 7とマークレビンソンのLNP2、どちらかくれるといわれたら、どちらをもらいます?、と。

仮定の質問であるから、どちらもコンディションはまったく問題ない。
新品同様のModel 7とLNP2が目の前にある。
どちらをとるか。

私はLNP2をとる。
けれど、誰かに、どちらをもらったほうがいいですか、とさらに質問されたら、
Model 7がいいですよ、と答える。

どちらも完璧なモノではない。
完璧なオーディオ機器など、この世には存在していない。
どんなモノであれ、いくつかの欠点は持っている。

欠点の少なさでいえば、Model 7であり、完成度の高さでもModel 7である。
デザインで判断してもModel 7である。

それでも私はLNP2をとる。
Model 7も手元においておきたいコントロールアンプのひとつである。
なのにLNP2をとるのは、個人的ないくつかのおもいがそこにあるからであり、
これはほかの人にはまったく関係のないことだ。

だから人にはModel 7をすすめ、私はLNP2をとる。
良し悪しだけでは割り切れぬことが、LNP2にはある。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その6)

シルバーパネルのML6のデザインが素晴らしいかときかれたら、そんなことはない、と答える。
ML6を実際に使ってみると、非常に使いにくい。

この項の(その3)に引用したRFエンタープライゼスの広告。
そこに書いてあるJC2のごく些細な使い勝手の欠点。
これを読んだ時は正直はっきりとわからなかった。

自分でJC2を使ってみると、それはわかる。

RFエンタープライゼスの広告はステレオサウンド 43号に載っている。
43号の巻末には囲み記事で、
マーク・レヴィンソンがステレオサウンド試聴室にML2のプロトタイプを持ち込んだとある。

このふたつは関係している。
マーク・レヴィンソンがJC2の使い勝手の欠点の指摘を受けたのは、アメリカではなくおそらく日本である。
ML2のプロトタイプをもって来日した時に、
オーディオ関係者から、ごく些細な使い勝手の欠点を指摘されたと考えて間違いない。

だとすると自分でJC2を使っていた経験からも、些細な欠点がどういうことなのかはっきりする。
確かにそれは使い勝手の欠点であり、それをごく些細な、と受けとるか、それともけっこう重要なこととするのか、
それは使い手によって違ってもこよう。

けれどML6の使い勝手の欠点はそうではない。
はっきりと、すべての人にとって使い勝手の最悪なコントロールアンプ(プリアンプと呼ぶべきなのだが)である。

最悪な使い勝手は写真をみてもわかる。
けれど実際に使ってみると、想像以上に使い勝手の悪さ(ひどさ)がある。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その2)

私は瀬川先生の、フルレンジから始める4ウェイシステム・プランが気になっていた。
自分でやることはなかったけれど、スピーカーシステムについて考える時に、思い出す。

瀬川先生の4ウェイシステム・プランは、JBLの4350、4341が登場する前に発表されていた。
4350、4341のユニット構成、クロスオーバー周波数の設定など、共通するところがある。
そのせいもあって私にとっての4ウェイとは、まずこれらの4ウェイがベースとなっている。

もちろん4ウェイといっても考え方はメーカーによって違うところもあり、
ユニット構成、クロスオーバー周波数の設定からも、それはある程度読みとれる。

4ウェイをどう捉え考えるのか。
2ウェイの最低域と最高域をのばすために、トゥイーターとウーファーを加えて4ウェイとする。
こういう考え方もある。

この場合、忘れてはならないのは40万の法則である。
つまり40万の法則に沿う2ウェイをベースとしてスタートしたい。
となると、この2ウェイのクロスオーバー周波数は40万の平方根である632.45Hz近辺にしたい。
下限と上限の周波数を掛け合せた値が40万となるようにする。

具体的に80Hzから5kHzの2ウェイシステムで、クロスオーバー周波数は630Hz〜650Hzあたりである。
そして指向特性が、この帯域において均一であること。
この条件に、D130と2441+2397がぴったりくる。

2397のカタログには推奨クロスオーバー周波数は800Hzとなっているが、
家庭での使用音圧であれば500Hzのクロスオーバーでも問題のないことは、
ステレオサウンドのバックナンバーでも実験されているし、問題なく鳴らせる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その1)

1997年にでたステレオサウンド別冊「いまだからフルレンジ1939-1997」。
この本で井上先生はJBLのE130を、
マルチウェイシステムのミッドバス帯域(100〜500Hz近辺)用として使うのにも最適だ、と書かれている。

15インチ口径のミッドバス。
組み合わせるウーファーをどうするのか。
E130をミッドバスと書かれているということは、4ウェイ前提だったのであろう。
とするとミッドハイはJBLの2インチ・スロートのコンプレッションドライバーをもってきて、
JBLのトゥイーター2405、もしくは他社製のスーパートゥイーターということになる。

そうとうに大がかりなシステムになる。
だから「いまだからフルレンジ1939-1997」を読んでも、
E130ミッドバスのシステムについて゛あれこれ考えることはしなかった。

けれどいまはちょっと違ってきている。
JBLのD130がある。

D130をソロで鳴らしていると、この類稀なユニットの良さは、たしかにッドバス帯域にある。
フルレンジとして鳴らすのも楽しい。
LE175DLHとの2ウェイもいい。
私は試していないが、075との2ウェイもいい、と思う。

けれどいまは2441と2397の組合せもある。
この組合せの存在が、井上先生のE130ミッドバスの4ウェイシステムを思い出させる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その5)

マークレビンソンのコントロールアンプにはML6というモデルがあった。
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」にはML6ALというモデルが登場している。
     *
 左右独立、それも電源からボリュウムコントロールまでという徹底ぶりだ。その勇気と潔癖症には脱帽するし、こういう製品が一つぐらいはあってもよいと思う。しかし、これはもう一般商品とはいえないし、プロ機器としては、さらに悪い。本当は業務用こそ、誰が使っても間違いなく、容易に使えて、こわれないものであるべきなのだ。この製品の登場は業務用機器のメーカーではないことを立証したようだ。
     *
菅野先生はこう書かれている。
この意見には完全に同意する。
ML6Aは、もっとも魅力を感じない。
だがML6Aの前身モデルであるML6になると、私の感じ方はまるで違う。

ML6はシルバーパネル、ML6はブラックパネルであり、
ML6はJC2(ML1)のモノーラル化、ML6AはML7のモノーラル化であり、
モノーラルにすることのメリットをより徹底的に追求しているのはML6Aである。

それでもML6Aのデザインには、色気を感じない。
ML6には、なにかを感じていた。

ML6とML6Aのデザインの違いは、フロントパネルの色だけではない。
レベルコントロールのツマミの周囲にML6はdB表示があった。
ML6Aは何も表示されていない。

フロントパネル中央にロゴがある。その両脇にML6はLEMOコネクターが配されていた。
ML6Aではネジになっている。
LEMOコネクターは金、ネジは銀。

言葉で違いを書けばこれだけなのだが、印象はまるで違う。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その4)

マーク・レヴィンソンがいたころのマークレビンソンのコントロールアンプのデザインが、
トラックやブルドーザーのように見えない、という方も少なくないだろう。

私もトラックやブルドーザーとは見えなかった。
念のため何度も書くが、LNP2のデザインは悪くはない。
けれど優れたデザインとは私は思っていないし、美しいデザインとも思っていない。

なぜ、菅野先生は、そんなふうに表現されたのだろうか。
ステレオサウンドにいたころ、直接菅野先生にたずねてれば……、と思いもするが、
たずねてしまうと、自分でなぜなのか、と考えることを放棄してしまうことにもある。

なぜなのかを四六時中考えているわけではないが、
1981年から、これまでずっと頭のどこかには、このことがあった。

「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」で、
菅野先生はマークレビンソンのパワーアンプについては、どう書かれているか。
ML2、ML3については、こう書かれている。
     *
Aクラス動作で25Wのモノーラルアンプがこの大きさ! いかにもMLらしい大胆な製品である。やりたいこと、やるべきことをやるとこうなるのだ、といわんばかりの主張の強さがいい。そして2Ω負荷100Wを保証していることからしても、アンプとしての自信の程が推察できるというものだ。パネルはML3に準じるが、ヒートシンクが非常に大きく、上からの星形のパターンが目をひく。2台BTL接続端子がついている。(ML2)

マーク・レビンソンのパワーアンプらしい風格をもった製品。200W+200W(8Ω)のステレオアンプで、見るからに堂々たる体躯のシンメトリック・コンストラクション。前面パネルにはパワースイッチだけがセンターに、その真上に、あのモダーンなロゴがプリントされている。両サイドのハンドルを含め、シンプルながらきわめてバランスのよい美しさである。これぞ、パワーアンプという雰囲気だ。(ML3)
     *
ML2、ML3、どちらに関してもパワーアンプのデザインとして高く評価されている。
ML7、LNP2、ML2、ML3、いずれもマーク・レヴィンソンのテイストを感じさせるアピアランスをもっている。
にも関わらず、コントロールアンプのデザインとパワーアンプのデザインの評価は、これだけ違う。

Date: 1月 7th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その3)

ステレオサウンド 43号のRFエンタープライゼスの広告。
     *
「JC-2というのはフェラーリなんだよ。」マーク・レビンソンがいつか云ったことがあります。
 まだレビンソンのアンプが世に紹介されて間もない頃でしたが、JC-2のごく些細な使い勝手の”欠点”を人から指摘されたとき、この生真面目な青年は、ちょっと顔を曇らせて黙って聞いていましたが、やがて口を開いてこう云ったのです。「……これは走るためにつくられたんだ。乗り降りの容易さとか、シフトが重いとか、そういうことが、このクルマにとってどうしてそんなに大事なのかね。」
 彼はそれきり口を噤んでしまいましたが、おそらく胸の中でこんなふうに考えていたことでしょう。「このクルマは、その性能を必要とする人に、そしてこれを乗りこなすことに喜びを感ずる人にこそ、乗ってもらいたものだ。」
     *
いまのステレオサウンドに載っている広告とは、ずいぶんと違う広告であった。
43号は、私には三冊目のステレオサウンドで、JC2はまだ見たことはなかった。
ステレオサウンドの記事でのみ知るアンプだった。

だから、JC2の些細な使い勝手の欠点が、どういうことなのか、それも想像できなかった。
ただ、JC2はフェラーリなんだ、ということが、印象に残った広告だった。

JC2のデザインはツマミに変更が加えられたが、基本的には変らず、ML7に引き継がれている。
菅野先生には、トラックかブルドーザーのようなデザインのML7なのだから、JC2もそういうことになる。

マーク・レヴィンソンは、「JC-2というのはフェラーリなんだよ」と言っている。
それはアンプとしての性能のことであり、デザインに関してのことではない、とも読める。
43号のFエンタープライゼスの広告では、そこのところまではわからない。

マーク・レヴィンソンはJC2のデザインに関しても、
「JC-2というのはフェラーリなんだよ」と思っていたのだろうか。

Date: 1月 6th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その2)

ステレオサウンド別冊「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」で、
菅野先生がML7のところでマークレビンソンのアンプのデザインについて書かれている。
     *
ただし、マーク・レビンソンの一連の製品についていえることだが、明らかに一般ハイファイ・マニアを相手にしながら、プロ機器仕様とデザインを決めこんでいるのはどうかと思う。トラックかブルドーザーのようなデザインばかりではないか。中ではLNP2Lが一番まともだが、決して使いやすくもない。
     *
これを読んで、LNP2のデザインに感じていたのは的外れではなかった、とほっとした。
ただトラックやブルドーザーのようなデザインには、完全には同意できなかったけれど、
菅野先生とはいわんとされているところはわかる。

何度も書くが、LNP2のデザインを悪いデザインとは思っていない。
けれど、優れたデザイン、美しいデザインとはこれまで思ったことはないし、
これから先もそう感じることはない、と言い切れる。

なのに、なぜLNP2は、いいデザインという評価が得られているのだろうか。
オーディオマニアすべてがそう思っているわけではないにしても、
少なくない人が、しみじみと「LNP2のデザイン、いいですよね」と発するのを聞いている。

悪いデザインとまでは思っていないから、あからさまに否定することはしないものの、
この人もそうなんだ、とは思ってしまう。

「LNP2のデザイン、いいですよね」という人は、
菅野先生の「トラックやブルドーザーのようなデザイン」という発言をどう受けとめているのだろうか。

Date: 1月 5th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その1)

マークレビンソンのLNP2というコントロールアンプ。
1970年代後半もっとも注目を集めたといえるコントロールアンプ。
私も憧れたことのあるコントロールアンプ。

よく耳にするのが「LNP2のデザイン、いいですよね」である。
あの時代の、憧れのコントロールアンプだから、悪いデザインとはいわないものの、
優れたデザインか、となると、そうとはいえない。

ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 1のカラー口絵。
JBLの4343をバックに、マークレビンソンのアンプが真正面から撮られたページがある。

この写真が象徴しているように、LNP2には精度感があった。
ウェストンのメーターは大きすぎず小さくもない、
三つあるレベルコントロールのツマミの周囲には、減衰量がdB表示されていた。
ツマミの大きさも大きすぎない。

精度感を損なう要素は見当たらないLNP2のフロントパネルであった。

HIGH-TECHNIC SERIES 1の写真は、そのことを充分伝えていた。
このページを切り取って壁に貼りたいとも思っていた。

それでもLNP2のデザインは優れているとは、思っていなかった。
これは、いまも変らない。

Date: 1月 3rd, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(serial No.1001・その4)

ステレオサウンド 42号の音楽欄に、平田良子氏による「時間に挑戦する男 デビッド・ボウイー」が載っている。

David Bowie、いまではカタカナ表記ではデヴィッド・ボウイだけれど、
42号が出た1977年は、デビッド・ボウイーだった。

私がデヴィッド・ボウイのことを知ったのは、この42号の記事だった。
4ページの記事、四枚のモノクロの写真。

世の中には、こういう人がいるんだ、と思いながら記事を読んだ。
記事には、こうある。
     *
ボウイーという人間は、中性的という以上の存在である。彼のなかには、性別や年齢を超越したもうひとりのかれがいて、ボウイーが生み出す方法論をつぎからつぎへとあざやかに実践してみせるのだ。
     *
42号の記事を読んだ時は、音楽記事としてだけ読み、デヴィッド・ボウイのことを知っただけで終った。
この記事を読んだからといって、デヴィッド・ボウイのレコードを買うことはしなかったし、
デヴィッド・ボウイ主演の映画「地球に落ちてきた男」も観ることはなかった。
(最寄りの映画館では上映していなかったように記憶している。)

だからデヴィッド・ボウイの音楽を聴いたのは、もう少し先のことだったし、
聴いたからといって、特にオーディオと結びつくことはなかった。

それからずいぶん経ち、デヴィッド・ボウイのある写真を目にして、4343のことが頭に浮んだ。
その写真は、やはりモノクロで1970年代後半のころのもののようで、いわゆるスナップ写真だった。
日本での写真だった。
背景には電車が写っている。

デヴィッド・ボウイと日本の当時の日常風景との組合せ。
その写真をみて、4343はデヴィッド・ボウイのようなスピーカー(スター)なのかもしれない──、
そんなことがふいに頭に浮んだのだった。

私にとって、4343の存在を知ったのも、デヴィッド・ボウイのことを知ったのも、
ほぼ同時期(三ヵ月違うだけ)であるからこそなのかもしれない。

Date: 12月 25th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(serial No.1001・その3)

最近では、名器も、こんなものにまで……、と思えるモノもそう呼ばれる。
傑作、佳作、力作──、こちらの言葉のほうがあてはまるだろうにと思えるモノを名器と呼ぶ人がいる。

人それぞれといえばそれまでだが、釈然としないものがのこる。

マークレビンソンのLNP2は名器なのか。
すなおにそうだとは、私はいえない。
強く憧れたオーディオ機器である。
有名なコントロールアンプである。
ある時期、LNP2に対するおもいははっきりと薄れてしまったが、
十年ほど前から、やっぱり手に入れたいアンプである、と思っている。

けれど LNP2を名器だと思っているからではない。
LNP2が現役だったころも、名器だとは思っていなかった。
このころ、強く憧れていた。

それは往年の名器と現代の名器の違いからくるものではないか、とそう考えたこともある。
けれど、違うように思う。

私のLNP2への憧れは、ポップスターへの憧れに近いものだったように、いまは思う。
往年の大スターが、どこか近寄り難い雰囲気をもつのとは、そこが違っている。

ポップスターといっても、LNP2、同時代のJBLの4343は大スターだった。
どちらも100万円をこえる価格だった。
それでも、どちらも相当に売れていた。

Date: 12月 2nd, 2014
Cate: JBL, 型番

JBLの型番

JBLのプロフェッショナル用スピーカーユニットの型番は四桁の数字。
2100シリーズがフルレンジユニット、2200シリーズがウーファー、
2300シリーズがホーン、2400シリーズがコンプレッションドライバーが基本となっている。

ミッドバス用のコーン型ユニットは2121、2122という型番だから、
ウーファーのようでもあるが、型番からはフルレンジということになる。
実際はウーファーに分類されるけれど。

数字の順序からすればフルレンジ、ウーファー、ホーン、コンプレッションドライバーとなっている。
ということはJBLの考え方としては、ホーンとコンプレッションドライバーの組合せにおいては、
まずホーンを選べ、ということなのではないか、と型番をみていると思えてくる。

フルレンジもウーファーもスピーカーユニットであり、音を発する。
コンプレッションドライバーもそうだ。
ホーンは違う。
なのに型番的にはウーファーとコンプレッションドライバーのあいだにいる。

ホーンとコンプレッションドライバーの組合せでコンプレッションドライバーを中心に考えるのであれば、
型番のつけ方としては2300シリーズがコンプレッションドライバーのほうがすっきりする。
けれど実際は2300シリーズはホーンの型番である。

誰がどういう意図で型番をつけていたのかはわからない。
けれど2300シリーズをホーンとしたのは、なんらかの意図があったのではないだろうか。

どの程度の空間にどういう指向特性で音を放射するのか。
まずこのことを決めた上でホーンを選び、次にコンプレッションドライバーを選べ、ということではないのか。

Date: 11月 9th, 2014
Cate: Technics, 名器

名器、その解釈(Technics SP10の場合・その11)

私が自分のモノとしたテクニクスのオーディオ機器はふたつある。
ひとつはSB-F01。
アルミダイキャストのエンクロージュア(といっても手のひらにのるサイズ)に、
ヘッドフォンのユニットを搭載したような小型スピーカーだ。

アンプのスピーカー端子でも鳴るし、ヘッドフォン端子に接いでも鳴る。
ペアで15000円だった。

サブスピーカーとして高校生の時に購入した。
ロジャースのLS3/5Aは高くて買えなかったから、というのもSB-F01を購入した理由のひとつである。
いまも実家にあるはずだし、手元にも1ペアある。
瀬川先生が所有されていたSB-F01である。

このSB-F01で、中目黒のマンションで深夜ひっそりとした音量で聴かれていたのだろうか。
はっきりとしたことはわからないが、瀬川先生がSB-F01をお持ちだったことが意外だったし、嬉しくもあった。

もうひとつのテクニクス製品はSL10である。
LPジャケットサイズのアナログプレーヤーである。
ダイレクトドライヴ開発10周年を記念して開発された製品だから、型番に10がついている。

このふたつのテクニクス製品に共通していえることは、小型ということ。
もともとテクニクスというブランドは、Technics1という小型スピーカーからスタートしている。
だからというわけでもないが、他のメーカーよりも小型の機器をうまくつくるところがある。

SL10がまさにそうだし、コンサイスコンポもそうだった。
それにSB7000の小型版、SB007もある。
その一方で非常に大型のアンプ、スピーカーシステムも手がけている。

小型のモノと大型のモノ。
テクニクスの製品に限っていえば、小型のモノには遊び心があるように感じている。
その遊び心に気づいたから、SB-F01とSL10を買ったのかもしれない。

遊び心。
辞書にこうある。
 ①遊びたがる気持ち
 ②まじめ一方でなく、ゆとりやしゃれ気のある気持ち
 ③音楽をたしなむ心

③の意味があるのは、意外だった。

遊び心という、自分自身が愉しむという気持、
これが使い手(買い手)に伝わる。