Archive for category ユニバーサルウーファー

Date: 12月 30th, 2010
Cate: ユニバーサルウーファー, 井上卓也

ユニバーサルウーファー考(その5・補足)

井上先生は、磁気回路がアルニコ磁石かフェライト磁石なのかによる音の違いは、
磁石としての性能の違いだけが影響してくるのではなく、アルニコとフェライトの製造方法の違いから生じる、
個体としての性質の違いも音に大きく関係してくることに注意しろ、とよく口にされていた。

アルニコとフェライトでは叩いた時の音がまったく異る。
しかも磁石の占める割合は、わりと大きい。磁気回路の強力なスピーカーユニットほど、
この固有音の違いもまた大きく音に関係してくるわけだ。

そして構造体としてスピーカーユニットを捉えた時に、
質量がどのように分布しているのかも重要だと言われていた。

ウーファーは基本的にコーン型かほとんどであるため、
構造体としてはほとんど同じだが、トゥイーターとなるとホーン型、ドーム型、コーン型などなど、
いろいろな種類があり、それによって構造が大きく異ってくる。
同じホーン型でもホーンの形状の違い、ユニット全体の構造の設計の違いなどによって、
ほぼ同じ重量のホーン型トゥイーターでも、質量が集中しているものもあれば、分散しているものもある。

同じ重量であれば、集中している方が全体の強度も高くなる。

それは手にした時の感覚的な重さの違いでもある。
同じ重量のトゥイーターでも、質量が集中して小型のモノと、わりと大きく質量が分散しているモノとでは、
前者の方がずしりとした感じを受けるだろう。

そういう要素は、かならず音に関係してくる。
というよりも、どんなことでも音には関係してくる。

Date: 12月 30th, 2010
Cate: ユニバーサルウーファー, 井上卓也

ユニバーサルウーファー考(その5)

もう30年以上まえのことだが、
井上先生が、マクソニックのトゥイーター、T45EXのことを、パワートゥイーターと表現された。

T45EXは、ホーン型トゥイーターのT45の磁気回路の磁石を、励磁(フィールド)型に置き換えたもので、
ベースとなったT45は重量3.8kgなのに、T45EXは9kgと倍以上の重量になっている。

JBLの2405が2kg、エレクトロボイスのT350が3.2kg、
強力な磁気回路を背負っていたピラミッドのT1でも3.85kgだから、
T45EXの物量の投入具合が重さからも伝わってくる。

構造体として、これだけの重量差があると、たとえ磁気回路がT45と同じで永久磁石だったとしても、
出てくる音には、そうとうの違いが生じるものである。
そこにもってきて励磁型で、しかも電磁石への電圧をあげれば磁束密度は高くなる。

井上先生は、磁束密度をあげたときの音は、パワートゥイーターとしての性格をはっきりと感じる、と言われている。

パワートゥイーターという表現がふさわしいT45EXの音はどんなだったのだろうか。
井上先生の発言を拾ってみると、
トゥイーター単体の付属音、シャッとかシャラシャラといった音がまったくいっていいほど出てこない、
2トラック38cmのオープンリールデッキで生録をするときにモニター用としてつかうことのできる製品、
ということになる。
だから、
生演奏の音をマイクで拾ってそのまま録音器を通さずにスルーで聴けば、
付帯音がなくて十二分なエネルギーが出せるので、すごい魅力が引き出せるはず、と評価されている。

ただ、こういう性格の音の場合、アナログディスクの再生では、高域の伸びが不足しているように聴こえ、
高域の音の伸びがもっと欲しくなるようおもわれが、実は十分なエネルギーが再現されているため、
いわば演出された繊細さにつながる高域感は稀薄になる──、そう受けとれる。

井上先生の書かれたものをよく読んでいる人ならば、このアナログディスク再生とテープ再生の対比で、
音を表現されることを、わりと井上先生は使われることに気づかれているはず。

Date: 3月 30th, 2010
Cate: ユニバーサルウーファー
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ユニバーサルウーファー考(その4)

ステレオサウンドから出版されていたHIGH-TECHNIC SERIESのVol.1は、
「マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ」だった。

このなかで、菅野先生が、次のことを書かれている。
     *
私はエンクロージュアに対してあるひとつの考え方をもっていて、しかも最近そのことについていろいろと実験しながらデータ的な裏づけが取れた暁にはオーディオ界に発表しようと思っていることがある。これはスピーカーシステム全体に対する問題といってよいのだが、特にウーファーに対しての、あたりまえのようだがいままで誰もはっきりと指摘したことのない問題点を、最近になってより一層はっきりと解明しつつある。それは何かというと、スピーカー、特にウーファーは忠実な変換器として動作していないのが実態であり、またこれを忠実な変換器として動作させると、オーディオ界全体を大改革しなければならなくなるのではないかということだ。
     *
HIGH-TECHNIC SERIESのVol.1は、1978年秋に出ている。
これを読んだ時、あれこれ空想した。とはいえ、オーディオに関心を持ってまだ2年目。
具体的に、それがどういうことを指しているのか、まったく見当がつかなかった。
これは、菅野先生が発表されるのを待つしかない、と思っていた。

Date: 3月 21st, 2010
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その3・補足)

サブウーファーの高さを、組み合わせる小型スピーカーシステムとほぼ同じにまでもってきたときの音について、
すこしだけ、やっぱりふれておきたい。

グールドの1981年再録音のゴールドベルグ変奏曲。
ここでも、グールドはハミングしている。
このハミングが、サブウーファーの高さを持ち上げたことで、じつに自然に響いてくる。
もともと耳障りだとは感じてなかったが、そう感じている人が聴いても、
決して耳障りだとはいわないだろう。

理想的なワンポイントマイクロフォンセッティングで、ひじょうにうまく録れたかのように、
ハミングが明瞭にきこえながらも、別々のマイクロフォンで、
別々の場所(ブース)で録った(いわゆるマルチマイクロフォン録音)のような不自然さはない。

響きの方向性がそろった音だ。

Date: 12月 25th, 2009
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その3)

小型スピーカーをメインとしている人で、サブウーファーの導入を検討されている、
もしくはすでに導入されあれこれ試されているのであれば、ぜひサブウーファーの位置を、
メインスピーカーと同軸的な位置関係になるよう、数10cm、思い切って持ち上げた音を聴いてもらいたい。

あえてどのように変化するのかは書かない。
私もまだひとつのケースでしか試していないし、条件が変われば、細かいところの変化は異ってくるから、
音の変化を縷々書いても、参考にならないところも出てくるだろうし、
できれば期待だけふくらませて、その音を聴いてほしいと思っているからだ。

なかなか適当な、そのぐらいの高さの台が見つからないという人もいるだろう。
私も、使っていないエンクロージュアを使っている。
決してサブウーファーの置き台として向いているものではない。
それでも、試してみる価値はあった。
苦労して、というよりも気合いを入れて持ち上げた甲斐があった。

置き台をさらに検討して、よりよいものを用意できれば、どんな台がいいだろうか、と考えている。

この実験で、確信が得られた。
604-8Gのワイドレンジ化をはかる時、やはりサブウーファーは、604-8Gと同じ高さまでもってくるつもりだ。

Date: 12月 20th, 2009
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その2・余談)

腰の負担という視点で椅子をみれば、坐り心地よりも立ち上がるときのことが重要になってくる。

オーディオほど、椅子に坐ったり立ち上がったりする回数が多い趣味はないと思う。
真剣に音を調整する時に、短時間の間になんども、この行為をくり返す。

ぎっくり腰の経験のない人、腰に不安のまったくない人はわからないかもしれないが、
坐り心地が良い椅子でも、立ち上がるときの腰の負担が意外に大きいものがある。
腰を痛めているときは、よけいにそのことに敏感になるし、気を使う。

腰への負担がなくスッと自然に立ち上がれる椅子は、意外に少ない。

Date: 12月 19th, 2009
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その2)

サーロジックのSPD-SW1600を導入してほぼ2年。
置き位置もほぼ決まった夏に、高さを3段階試してみた。

高さを上げるほどに、メインスピーカーとの一体感が増していくように鳴る。
そこで思いついたことを試してみた。
メインスピーカーを小型スピーカーにする。
ウーファーの口径は10cm、エンクロージュアの高さは20cm強だから、
SPD-SW1600のウーファーの口径(30cm)よりも小さいから、すっぽりおさまるようなかっこうになる。

これは、疑似的な同軸型スピーカーにできるかもしれないと思い、
SPD-SW1600の置き台に、使っていないスピーカー・エンクロージュアを使う。
ちょうどうまい具合に、SPD-SW1600のウーファーの位置が、小型スピーカーのほぼ真横になる。

サブウーファーを、この高さまで持ち上げて聴いたことはなかった。
かなりの重量があるSPD-SW1600を、ひとりで数10cm持ち上げるのが、じつは億劫だったこともある。
それに実際に試してみるとわかるが、持ち上げるのよりも大変なのは床に降ろすほうである。
ふたりでは降ろす方が楽だろうが、ひとりだと降ろす作業は、腰への負担がかなり増す。

Date: 9月 23rd, 2008
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その1)

最近ではデジタルディレイのおかげで、
スーパー(サブ)ウーファーをメインスピーカーよりもかなり前に出している例を見かける。 

これでも良さそうな感じだが、実際に聴くと、よろしくない。
耳だけで聴いている低音ならば、それでも良しだろうが、
体感する低音となると、あきらかに違和感を感じる。
どんなにデジタルディレイで時間差を調整したとしても、
メインスピーカーとスーパーウーファーの距離差が大きいと、
スーパーウーファーがかなり手前にある場合、
すぐ近くで鳴っていると体が感じてしまう。 

体感する低音となると、左右チャンネル共通のスーパーウーファーならば、センターに置くしかない。 

仮想音源と実音源をよく理解したい。

Date: 9月 23rd, 2008
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その1)

1月にサブウーファーを導入した。
サーロジックのSPD-SW1600である。
ご存じのように、アナログ信号をデジタル信号に変換して、DSPによってカットオフ周波数の変更、
急峻なハイカット、タイムディレイなどをコントロールしている。

デジタル信号処理そのもの、その可能性にはすごく期待しているが、
いまのところは、まだ完全には信用していない面もあるというが本心だ。
タイムディレイにしても、音質変化がゼロとは思えないし、思っていない。

どういう処理で行なうかによっても、音は違ってくるだろうし、
タイムディレイだけでもこんな感じだと、他の信号処理が洗練されていくのは、
ハードウェアの進歩とともにソフトウェアの進歩と洗練も必要になるだろうから、
もうすこし先のことになるだろうし、<実際に製品が積極的に市場に出ることによって、その時間は短縮される。 CDプレーヤーが登場したときに、その音に触れて、 「発売を1年くらい遅らしてでもいいから、もう少しいい音に仕上げてから出してほしかった」 という声があったが、 実際に市場に出て、ユーザーの声がフィードバックされることにより、進歩はあきらかに早くなる。 そういう気持ちにどこかにあるためか、いまサブウーファーを考えると、 ユニットは二発にして、一発はいっさいの処理を行なわないストレートな信号を入力、 もう一発には、デジタル信号処理でもいいしアナログのイコライザーを使用してもいいが、 とにかく部屋の特性を含めて、補正した信号を入力する。 つまりパワーアンプは、それぞれのユニットごとに必要になる。 同時に、それぞれのウーファーのレベルは別個に調整できるようにして、 角度も独立して変えられるようにしたい。 そしてサブウーファーという言い方ではやめたい。かわりにユニバーサルウーファーと呼びたい。 ユニバーサルウーファーという名にふさわしいモノは、 どういうかたちなのかを考えていきたい。