便利であっても(その3)
目的のパーツを購入するのにそんなに時間はかからない。
そのあとの用事もない。
なので、前回来たときには行けなかった店。
午後からの開店なのを忘れていて、午前中に行ってしまったためである。
その店が午後からなのも忘れてしまうくらいだから、数年ぶりにオーディオ専科に行った。
真空管アンプを自作されている方には説明の必要のない、そういう店である。
オーディオ専科に入って、すぐに気がつくのは、独特の匂いである。
けっして悪い意味ではない。
この匂いは、アメリカ製のパーツを取り扱っている店に共通する匂いであり、
私が上京したばかりのころは、こういう店はここ以外にもいくつもあった。
秋葉原だけでなく、うろ覚えだが神田駅の近く、路地を入った雑居ビルにもあった。
それから立川の北側のはずれにもあった。
ここは米軍の払い下げ品を主に扱っている店で、立川駅からバスに乗って行った。
秋葉原にもオーディオ専科のほかに、富士商会があった。
秋葉原の店舗は、どのくらい前になるだろうか、閉じてしまった。
こういう店は、オーディオ専科と共通する匂いがしていた。
だから私は、この匂いを嗅ぐと懐かしい、と思うとともに、なにか自作したい気持にもなるし、
通販は便利で確かに安いけれど、たまには出かけてみるのもいいな、と思える。