background…(その3)
ポール・モーリアの「恋はみず色」を初めて聴いているのだとしたら、
聴いている途中で電話がかかってきたり、宅急便が届いたりすることは、いわば邪魔といえる。
「恋はみず色」を、その時初めて聴いている聴き手は、
邪魔がはいればそこで、いま鳴っている「恋はみず色」を止め、用事をすませた後で、
スピーカーの前に座り直して、聴きつづけることだろう。
その際に、中断したところから聴きはじめるのか、それとも頭から聴き直すのか。
ポール・モーリアの「恋はみず色」を家庭で聴くときは、
レコードに頼るかラジオから流れてくるのかのどちらかである。
ラジオの場合、自分の好きな時に聴けるわけではないし、
次にいつ放送されるのかもわからないから、
「恋はみず色」をすでに聴いたことのある聴き手であっても、
ラジオからの「恋はみず色」に、いいメロディだな、と思っていた時に、
電話、宅急便がそこに割りこんできたら、邪魔だと感じるのか。
レコード(アナログディスク、CD、カセットテープなど)で聴いていれば、
電話、宅急便が割りこんできても、もう一度、というより何度でも、
「恋はみず色」のレコードを手放さないかぎり、いつでも聴くことができるわけで、
だからこそ、電話、宅急便などの割り込みがあったとしても、
その間、「恋はみず色」を流しぱなしにするとはいえないだろうか。
レコードで「恋はみず色」を聴く場合でも、
初めて聴くときと、二度目以降に聴くときとでは、
電話、宅急便などの割り込みに対する感情も変っていくのだろうか。