Posts Tagged ピアノ

Date: 7月 14th, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(その7)

1977年12月に出たステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」に、
JBLの4350Aの組合せ記事がある。

菅野サウンドのジャズ・レコードを
制作者の意図したイメージで聴きたい

この見出しがついていて、4350Aを選択し、組合せをつくられたのは菅野先生である。

組合せ例はここでのテーマとは関係のないことだが、一応書いておく。
スピーカーはいうまでせなく4350A。
アンプはコントロールアンプがアキュフェーズのC220、
エレクトリッククロスオーヴァーネットワークもアキュフェーズで、F5。
パワーアンプは低域用にアキュフェーズM60、中高域用にパイオニアExclusive M4。
アナログプレーヤーはテクニクスのSP10MK2にSH10B3(キャビネット)、
トーンアームはフィデリティ・リサーチのFR64S、カートリッジはオルトフォンMC20である。
この他に、ビクターのグラフィックイコライザーSEA7070が加わる。

この記事で、菅野先生が話されている。
     *
私は『サイド・バイ・サイド』にかぎらず、とくに私自身が制作・録音したジャズのレコードは、実際よりも大きな音量で楽しんでいます。さらにいえば、『サイド・バイ・サイド』のシリーズの場合、かなりのラウドネスで聴いていただいてはじめてベーゼンドルファーの音色の細やかさ、まろやかさ、芯の強さといったものが生きてくると思います。
     *
私はなにも大きな音量で必ず聴け、といいたいのではなく、
音量設定の自由に自ら制約をつくっていかなくてもいいのではないか、ということだ。

Date: 7月 14th, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(その5)

ピアノのAキーを叩く。
440Hzのピアノの単音が鳴る。
ここで鳴ってくるのは440Hzの正弦波ではない。

もし440Hzの正弦波が鳴ってくるのであれば、
ピアニッシモの440Hzの音とフォルテッシモの440Hzの音との区別は、
音量が同じであれば区別はつかない。

けれど鳴ってくるのはあくまでもピアノの音であり、
このピアノの音には近接している弦が共鳴する音、
ピアノのボディの音などがいっしょに鳴ってくる音であり、
強く弾かれたときと弱く弾かれたときとでは、これらの要素が変ってきて、
そのことにより、たとえ音量に違いがなくとも、ピアニッシモで本来鳴っている音と、
フォルテッシモで鳴っている音との区別はつく。

もちろんこれは音を聴いてきた時間(経験)があるからで、
まったくピアノの音も、その他の楽器の音も聴いたことがない人にとっては、
再生音量が同じであれば、ピアニッシモのピアノの音とフォルテッシモのピアノの音は、
どちらがどうかとはわからないかもしれない。

われわれはどんなに小音量で聴いていても、
フォルテッシモで鳴っている音はそうであることがわかるし、
反対に大音量で聴いていても、ピアニッシモで鳴っている音はそうだとわかる。

だからこそオーディオにおいて音量の自由が存在している、といえる。

Date: 7月 14th, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(その4)

映画館のスクリーンには、俳優が大映しになるシーンがある。
大きなスクリーンいっぱいに、俳優の顔が映る。
それは人間の実際の大きさよりもずっと大きい。
にも関わらず、観客はそのことを不自然だとは思わない。

そういったシーンで、ささやき声でセリフが使われれば、
そのささやき声は、実際のささやき声よりも大きい。

スクリーンの前に俳優が登場して、ささやき声でセリフでいったところで、
映画館のすべての観客に、そのささやき声が聞こえるわけではない。

大きな音でのささやき声。
これも俳優の顔のアップと同じで、特に不自然だとは感じていない。

それはささやき声は、ちいさな音で再生されるからささやき声であるのではなく、
ささやき声は最初からささ譜やき声であり、そのささやき声の特質をスピーカーが鳴らしてくれれば、
観客(聴き手)は、音が大きかろうと、ささやき声だと認識できる。

このことは何もささやき声だけではない。
楽器も同じだ。たとえばピアノ。
単音でいい。ピアニッシモで弾かれた単音と、フォルティッシモで弾かれた単音とでは、
それを録音して、同じ音量になるように再生しても、聴き手は、どちらがピアニッシモで弾かれた単音なのか、
すぐに判別できる。