Posts Tagged カートリッジ

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その7)

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型カートリッジの内部構造は、
サテンのカートリッジに似ている、といえる。

いまは1980年代であれば、これだけで説明がすむわけだが、
いまは30年以上が過ぎ去った2014年で、サテンのカートリッジ、といっても、
サテン? という人が大勢いるだろうし、
サテン、懐かしいなぁ、という人でも、その構造がどうなっていたのかをすぐに思い出せる人は少ないかもしれない。

サテンのカートリッジの原型となっているのは、ウェストレックスの10Aといえる。
ウェストレックスはカッターヘッドをつくっていた。
10Aはカッターヘッドとペアになっていて、
カッティングされたラッカー盤の検聴用を目的としたカートリッジである。

ラッカー盤は基本的に一度だけの再生である。
それもあってか、10Aの構造はウェストレックスのカッターヘッドをそのまま再生用カートリッジとして、
規模を小さくといえるものである。

10Aの構造図を正面からみると、針先からV字状にアーマチュアがのび、
その先端に円筒形のコイルが取り付けられている。

この10Aの構造を模倣したのが、日本のニートのV50である。
サテンのMC型カートリッジも10Aと基本的には同じ構造だが、
コイルの形状を変え、磁気回路の設計も10Aとは異るし、
針交換を可能にするなど、サテンならではの工夫がみられる。

このあたりは業務用専門としてのウェストレックスとコンシューマー用としてサテン、
それにトレースは基本的に一度きりのラッカー盤相手のカートリッジと、
何度でもトレースする塩化ビニール盤(LP)相手のカートリッジの違いともいえる。

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型は、このサテン型の発電コイルをリボンに置き換えた構造といえる。

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その6)

カートリッジにおけるベンディングウェーヴ方式──、
そんなことが可能なのか。可能だとすれば、どういう構造になるのか。

この一年、そのことをずっと考えてきたわけではない。
数か月ごとに、ふっと思い出しては、どうすればいいのか、ぼんやりと考えていた。

考えていた、と書いたけれど、考えていた、とはいえないレベルでのことだが、
それでも、なにか突破口となるの切り口はないのか、と考えていた。

それで気がついたのが、リボン型カートリッジのことだった。
リボン型は、MC型の一種である。

MC型はMoving Coilということからもわかるように、
マグネットが固定されていて、コイルが動くことで発電する。

このコイルの巻数を極限まで減らしていったら……、
それはもうコイルではなくなってリボンになってしまうわけだが、
スピーカーユニットでリボン型があるように、カートリッジにもリボン型のカートリッジが、
日本のナガオカが製品化していた。

最初のころはナガオカの名前で、後にジュエルトーンのブランドで出していた。
おそらくリボン型カートリッジはナガオカ/ジュエルトーンだけだったはずだ。

Date: 9月 5th, 2008
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(その5)

瀬川先生のカートリッジのクリーニング方法。 

アナログ全盛時代を体験された方ならば、おそらくひとつ以上はお持ちであろう 
FR社のカートリッジ・キーパー・ケース。 
5つのカートリッジをヘッドシェルにとりつけたまま収めることができて、 
カートリッジの持ち運びにも便利なこのケースの内部は、硬めのスポンジ。

瀬川先生は、このスポンジ部分で、 カートリッジの針先の汚れを落とされていた。 
カートリッジを指で持って、針先で、 このスポンジを、まっすぐにひっかく。 
だから、瀬川先生のケース内のスポンジは、 ひっかきキズだらけ。 

もちろん、慣れていないと針先がとれてしまったり、 
カンチレバーをいためたり曲げたりするため、 だれにでも勧められる方法ではないけど、 
これがいちばんだ、と話されていた。

液体のスタイラスクリーナーは、よほどしつこいゴミが付着したとき以外は、
まったく使わない、とも話された。
アルコールが主成分だが、すぐにすべてが蒸発するわけでなく、
カンチレバーの表面を、蒸発せずに残ったクリーナー液が毛細管現象でダンパーに届き、
変質もしくは傷めてしまうから、ときいた。

レコード(アナログディスク)のクリーニングも液体はいっさい使わず、
もっぱらビロードを円筒状にしたセシルワッツのクリーナーを愛用している、とのこと。

そして、大事なのは、聴き終ってレコードを内袋に収める前にクリーニングすること、と言われた。
スクラッチノイズは、ディスクに付着したゴミよりもキズが原因であり、
意外にキズがつきやすいのが、ゴミを付着したディスクをそのまま保管しているときだからだ。