賞からの離脱(その15)
62号の1年後のステレオサウンドは66号になる。
66号の特集は、「2つの試聴テストで探る’83″NEW”スピーカーの魅力」と
「第1回《コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー》賞」であり、
“State of the Art”は、もう使われなくなっている。
本来ならば”State of the Art”賞の五回目となるはずだったのだが、
66号から”State of the Art”から”Components of the year”への賞の名称が変更になった。
その理由は選考委員長である岡先生が
「かくして《コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー》賞は誕生した」に書かれている。
アメリカにSOTA(State of the Artの略称)というブランドが誕生し、
日本に輸入されることになったのが、大きな理由とされている。
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一方が賞の名前であり、一方が製品のブランド名であるという風にわりきってなんら差し支えないという理屈は成り立つが、関係者としては何とも奇妙な気分になってしまう。仮にSOTA社の製品が選考の対象になったときに、審査委員諸氏には多かれ少なかれ心理的な影響を与えることになりはしないかということも考えなければならない。
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とはいえ名称変更の理由はこれだけではない。
岡先生は続けて、こう書かれている。
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第一回発表に際して、オーディオコンポーネントにおける”State of the Art”の意味をかなりくわしく説明したし、アメリカで使われはじめたこの言葉は、最近では欧州のオーディオ・ジャーナリズムにもしばしばつかわれるほど英語系以外の国にも浸透してきている。しかし、言語をまったく異にする日本では、まだオーディオファイルのあいだに定着したとはいえず、「あの賞の意味はどういうことですか」という質問をうけて、いろいろと説明しなければならなかったという体験をいまだに重ねている。
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残念なことだとおもっていた。
このとき私はステレオサウンド編集部にいた。
だから、よけいに”State of the Art”が浸透しなかったことに、意外な感じも受けた。
ステレオサウンドは第一回の49号で、かなりページを費やして”State of the Art”について語っている。
第二回の53号にも、各選考委員による「ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって」が載っている。
すくなくとも49号以降、続けて読んできている読者ならば、
その人なりの”State of the Art”という、なじみにくいことばについての解釈はできていようと思ったからだ。