世代とオーディオ(その5)
カセットテープ(性格にはコンパクトカセットテープ)は、フィリップスの特許である。
けれどフィリップスは、このカセットテープの普及のため、特許を無償公開している。
この特許には、テープスピードも(おそらく)含まれているのだと思う。
ナカミチの680ZXだけで半速仕様が終ってしまったのは、
フィリップス側からのクレームだった、ときいている。
無償公開をしている特許であるから、勝手に仕様を変えるな、ということだったらしい。
フィリップスの、この言い分はもっともだと思う。
それでもカセットテープの半速がなくなってしまったのは、
個人的にはカセットテープの楽しみ方の広がりをひとつ潰したようにも感じられる。
オープンリールデッキにはテープ速度が切り替えられるから、
ユーザーの自由によりテープスピードを選べても、
カセットテープに関しては、他社製のデッキには半速モードはない。
テープとは録音した聴き手だけのものではない。
誰かに渡すこともすくなくない。
そうなると半速が混じってしまうことは、混乱を引き起こすことにもつながっていく。
そう考えれば、フィリップスがナカミチにクレームを出したのも理解できる。
680ZXは徒花的カセットデッキだった。
だから、いまも欲しい、と思っている。