ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その7)
話は前後するが、トリオの会長だった中野氏と本田氏によるヴァイタヴォックスCN191の調整で注目したいのは、
30mのスピーカーケーブルを10cm単位で調整していった、ということ。
30mは3000cmだから、10cmは割合からいえばほんのわずかでしかない。
にも関わらず、両氏は30mのスピーカーケーブルの長さを10cm単位で調整されている。
1mの長さのスピーカーケーブルを10cm単位で調整するのならばまだしも、
30mのうちの10cmで、そんなわずかなことで音は変らない、という人は常にいる。
けれどオーディオの調整とは、そういうところにも存在しているのは、
そのオーディオ歴の長さではなく、ほんとうに真剣にやってきた人であれば、理解されることのはず。
このことに関係して思い出すのは、
一ノ関のベイシーの菅原正二氏が、やはりスピーカーケーブルについて語られたことである。
ベイシーのスピーカーケーブルが実際にどれだけの長さなのか、私は知らないけれど、
かなりの長さであることはきいている。
菅原氏は定期的に接点のクリーニングを兼ねて、スピーカーケーブルの末端を切り、
新たに被覆を剥いて新しく芯線の露出をやられている。
とうぜん、この作業によってスピーカーケーブルはスピーカー側とパワーアンプ側の両方をやることで、
数cmずつ短くなっていく。
スピーカーケーブルは原則として0mが理想として語られている。
つまりどんなに優れたスピーカーケーブルであってもどんどん短くしていけば、
究極的には(もちろん実際に不可能なことだけど)0(ゼロ)にできれば、
スピーカーケーブルの影響からは逃れられることになる。