オーディオ機器を選ぶということ(聴かない、という選択・その1)
オーディオは、聴くことからはじまる。
だから、少しでも数多く聴いたほうが、原則としてはいい、といえる。
たとえばいまはあまりいわれなくなっていことに、
アメリカンサウンド、ブリティッシュサウンドといったことがあり、
アメリカンサウンドもウェストコーストとイーストコーストとに分類されていた。
実はそのころから、たとえばブリティッシュサウンドといっても、
タンノイとQUADのESLとではずいぶん音の傾向は異るし、
同じダイナミック型のスピーカーシステムでも、タンノイとBBCモニター系のモノとでは、やはり異る。
BBCモニター系と呼ばれるスピーカーシステムでも、
スペンドールとロジャース、それにハーベスでは、それぞれに独自の音をもっている。
だからブリティッシュサウンドなんて呼ばれるものは、
オーディオ評論家が勝手に作り出したものだ──、
という意見があったのも事実である。
こういう意見も間違っているわけではない。
確かにブリティッシュサウンドといっても、メーカーによって音は異っていて当然であるし、
それはアメリカンサウンドについても同じことがいえる。
けれど、おそらくブリティッシュサウンドなんて、アメリカンサウンドなんて、といわれる方は、
それほど多くのスピーカーシステムを、それもまとめて聴く機会がなかった方ではないだろうか。
いや、そんなことはない。
新製品はできるだけオーディオ店に行き聴くようにつとめているし、
友人・知人の音も聴いているし、
どこかにいい音で鳴らしている人がいると耳にすれば、つてをたよって聴きにいく。
だから、そこそこの数の音を聴いている──、
そう反論されるだろうが、
どんなに個人で積極的にさまざまな音を聴いたとしても、
それはオーディオ評論家とオーディオ評論家と名乗っている人たちが聴いている多さからすると、
かなり少ない、ということになる。
そして大事なのは、たとえばスピーカーシステムの試聴があるとしたら、
短期間に集中的にかなりの数のスピーカーシステムを聴くことになる。
日本のスピーカー、アメリカのスピーカー、イギリスのスピーカー、その他の国のスピーカーなど。
こうやって聴くことによって見えてくることがらがあり、
だからこそアメリカンサウンド、ブリティッシュサウンドがあるということに気がつくのである。