Date: 11月 13th, 2012
Cate: Wilhelm Backhaus
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バックハウス「最後の演奏会」(その4)

骨格のしっかりした音、
いまでは、こういう表現は、見かけなくなっているように感じている。

正直、最近のオーディオ雑誌を丹念に読んでいないから、感じている、としか書けないのだが、
以前は、といっても20年以上前は、骨格のしっかりした音という表現は、そう珍しくはなかった。

音を表現する言葉の使われ方も、また時代によって変化していく。
だから次第に使われなくなっていく表現もあれば、徐々に使われはじめてきて、
いまや一般的に使われている表現だってある。

音を表現する言葉はそうやって増えていっているはずなのに、
使われている言葉の数は、いまも昔もそう変らないのかもしれない。
新しくつかわれる表現・言葉がある一方で、使われなくなっていく表現・言葉があるのだから。

骨格のしっかりした音も、そうやって使われなくなっていく(いった)表現なのかもしれない。

でも、なぜそうなっていたのだろうか。

私の、それもなんとなくの印象でしかないのだが、
クラシックの世界でヴィルトゥオーゾと呼ばれる演奏家が逝去していくのにつれて、
骨格のしっかりした音も、また活字になることが減っていっているような気もする。

このことはスピーカーが提示する音の世界ともリンクしているのではないだろうか。
骨格のしっかりした音のスピーカーが、こちらもまた減ってきているような気がする。

ハイエンド志向(このハイエンドというのが、都合のいい言葉のように思える)のマニアの間で、
高い評価を受けているスピーカーシステムが、
何かを得たかわりに稀薄になっているひとつが、骨格のしっかりした音のようにも思う。

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