ショルティの「指環」(その3)
ショルティの「指環」が、発売当時、ものすごく話題になっていたことは、
知識としては知っていたものの、学生のときには、これだけのセットものを買うことは無理だったし、
他に、優先的に欲しいレコードばかりだったこともあり、ショルティの「指環」を聴いたのは、
じつはCDになってからである。
私が最初に買って聴いた「ニーベルングの指環」は、イタリア・チェトラから出た、
フルトヴェングラーが、スカラ座オーケストラを振ったライヴ録音のものだ。
もちろんLPである。
発売の数ヵ月前から、フルトヴェングラー初のステレオ録音という謳い文句で宣伝されていたディスクだ。
結局、モノーラル盤だったが、銀座の山野楽器で、このセットをレジで手渡されたときは、
想像以上に重かったことが、はじめての「指環」であることを実感させてくれたし、
これからこれを聴くのかと思うと、わくわくという期待と、
シンドイだろうなぁ、という気持がないまぜとなって、さらに重さがましたように感じていた。
いまなら、インターネットで注文して、宅急便で届くのを待つだけであろうが、
当時は、これを両手で抱えるようにして、夕方の満員電車に乗って帰宅するのも、
とにかく気を使い、大変だったことを思い出す。