「言葉」にとらわれて(その14)
ステレオサウンド 51号に載っている「続・五味オーディオ巡礼」に登場されているのは、
東京のH氏である。
他の号の「続・オーディオ巡礼」に登場している人の名前は出ていたし、顔写真も載っていた。
でも、51号のH氏だけは匿名で顔写真もない。
このH氏は、原田勲氏である。
ヴァイタヴォックスのCN191に、マランツのModel 7とModel 9のペア、
プレーヤーはEMTの927DstにカートリッジはフィデリティリサーチのFR7というシステム。
五味先生は
〝諸君、脱帽だ〟
ショパンを聴いてシューマンが叫んだという言葉を思いだした、
と書かれ、
さらに47号の登場された奈良の南口氏の装置で、
「サン・サーンスの交響曲第三番の重低音を聴いて以来の興奮をおぼえたことを告白する」とまで書かれている。
原田編集長はその後、スピーカーをCN191からアクースタットのコンデンサー型に、
アクースタットからタンノイのRHR Limitedにされていて、
ヤマハのAST1の試聴時はRHR Limitedだったはず。
AST1を試聴した1988年の秋、
私はそのことに気がついていなかった。
クリプシュホーンのCN191を鳴らしてきた男が、ヤマハのAST1の低音に驚き、喜んでいる、ということに。
そして、もうひとつ気がついてなかったことがある。
クリプシュホーン、バックロードホーンは「音軸」をもつスピーカーである、ということを。