スーパーウーファーについて(続×六・低音再生とは)
空気中の音速は、秒速約340m。
人間の感覚からすると秒速340mは非常に速いわけだが、
スピーカーシステムを構成する、いくつもの材質の内部音速からすると、
空気中の音速は遅い方に属してしまう。
たいていのスピーカーシステムはエンクロージュアをもつ。
フロントバッフルにウーファーがとりつけられている。
ウーファーはコーン型だから前面だけでなく背面からも音を出している。
つまりエンクロージュア内に向けて音を出しているわけだ。
コーン型ウーファーの背面から放射された音がエンクロージュアのリアバッフルに反射して、
フロントバッフルに戻ってくる。
エンクロージュアの奥行きの深いプロポーションと浅いプロポーションとでは、
リアバッフルに反射して戻ってくる時間に差があり、
内容積が同じエンクロージュアであっても音に違いが生れる。
深いエンクロージュアの音の傾向を好む人もいれば、
浅いエンクロージュアの音の傾向を好む人もいる。
──こんなふうなことが昔からいわれてきている。
リアバッフルからの音は、たしかにフロントバッフルに戻ってくる。
けれど、この音はウーファーの背面から放射された音が戻ってくるよりも早く、
別の音がリアバッフルで生じて戻ってきている。
この現象については、ダイヤトーンがDS1000を開発したときに見つけ、
DS10000の記事がステレオサウンド 77号に掲載されたときにダイヤトーンの技術者が語っている。
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これまでの理論だと、ユニットの後面から出た音が裏板にはねかえって、ユニットに戻ってくることになっていて、我々もその説を信じて、実証することもなくすませていたんです。それがDS1000の開発過程で測定してみますと、ウーファーから音が出てから、その音が反射して戻ってくる時間がエンクロージュアの片道分しかない。つまりユニットの音が反射して戻ってくるのではなくて、ユニットから音が出る瞬間に裏板からすでに音が出ていることがわかりました。フレームとサイドパネルを通じて、振動が伝播して裏板が鳴っていたんです。
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スピーカーユニットのフレームの金属やエンクロージュアの材質である木の内部音速よりも、
空気中の音速が遅いために、こういうことがスピーカーの内部では起っている。
ということは当然スピーカーの外側でも同じ現象が起っているわけである。