Date: 10月 30th, 2012
Cate: 表現する
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夜の質感(その2)

ステレオサウンドの試聴室では、よくマーラーを聴いた。
作曲家別でいえば、やはりマーラーがいちばん多かったかもしれない。

私がステレオサウンドで働きはじめたのは1982年、
最初に試聴で聴いたマーラーはアバド/シカゴ交響楽団の第一番だった、と記憶している。
これはサウンドコニサーの試聴で、一楽章を何度も聴いた。
出だしの、あのはりつめた感じの温度感が、スピーカーが変ると、アンプが変ると、
きりっとした空気感が漂いはじめもするし、どこかぬるい澱んだ空気にもなったりして、
温度感もそれにともない上下する。
こんな朝の空気では目も覚めない、といいたくなるものもあれば、
しゃきっと目が覚めるような感じにもなる。

次はレーグナーの第六番だった。
インバルの第四番、第五番も何度聴いたことだろう。
小澤征爾の第二番は、井上先生がよく使われていた。

これら以外のマーラーも、単発で試聴に使われることがあった。

試聴はときどき夜にかかることもあったけれど、
ほとんどは昼間に行われる。場合によっては朝から、というときもあった。
明るい時間帯にマーラーの交響曲をくり返し聴く。

別にマーラーに限らないのだが、
マーラーを聴きたい気分だろうが、そんなことは関係なくくり返し聴くのが試聴であり、
それゆえに試聴レコードの選定の難しさがある、といえる。

自分のシステムで聴くマーラーとは違う接し方・聴き方のマーラーがあった。
そのおかげで気がつくことがあった。

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