日本のオーディオ、日本の音(その11)
ステレオサウンド編集部にいたころ、ジョン・カールにインタヴューする機会があった。
ジョン・カールによると、マークレビンソンのML2(彼によるとJC3)の、
あの独特な形状のヒートシンクは市販品である、とのことだった。
たしかにML2の登場以前に、同形状のヒートシンクを採用したアンプは、国産にも海外製にもあった。
ただ、どちらもML2のように、視覚的に強くアピールするコンストラクションではなかった。
ML2(No.20)といえば、まずあの星形ともいえるヒートシンクが、
シャーシー左右にそれぞれ3基ずつ並んだ外観がまっさきに浮ぶ。
筐体のじつに2/3は、ヒートシンクということになる。
これに較べるとソニーのTA-NR10では、ヒートシンクはシャーシー内部に収められている。
せっかくの純銅ブロック製のヒートシンクなのに、外観からはまったくそのことは伝わってこない。
これを日本的ともいえるだろうけど、もうすこしアピールするようにしていれば、
TA-NR10への注目度は増していたかもしれない。
ヒートシンクをシャーシーの外に出すのか、内にしまいこむのか。
これだけでも音は違ってくる。
一概にどちらがいいとはいえない。
シャーシー内におさめることのメリットもあればデメリットもある。
外側に配置するメリットとデメリットもある。
とくにモノーラルアンプの場合やマルチアンプの場合には、
パワーアンプを複数台使用することになるわけで、
その場合にもヒートシンクがシャーシー内にあるアンプと外にあるアンプとでは、
アンプの配置において気をつけることが変ってくる。
ヒートシンクが音叉的存在であることを考えれば、
なぜそうなのかは想像できるし、予測のつくことでもある。