日本のオーディオ、日本の音(その3)
ステレオサウンド 60号は、
ひじょうに大がかりな試聴による特集「サウンド・オブ・アメリカ」を行っている。
続く61号では「ヨーロピアン・サウンドの魅力」、62号が「日本の音・日本のスピーカー その魅力を聴く」である。
これらの特集はすべてステレオサウンド創刊15周年記念の企画で、
たしかに60号の「サウンド・オブ・アメリカ」はそのことを感じさせてくれた。
このころはまだ読者だったわけで、
正直60号より61号は、すこし誌面から伝わってくる熱気が少なくなっていたように感じていた。
それはなにも編集方針が……、というよりも、瀬川先生の不在によるところも大きい……、
と当時から思っていた。
61号を手にしたときから、ここに瀬川先生がいたら、どんな発言をされていただろうか……、
そんなことを想像しながら読んだ61号だった。
62号は「日本の音」が特集のテーマ。
60号、61号の特集のテーマからすると、
企画そのものに、まだ10代だった私はそれほど興味を持てなかった。
しかも瀬川先生は、もうおられない。
そして62号は、私にとってステレオサウンド編集部に加わることの出来た号でもある。
私が働くようになったときには、すでに特集の取材は終っていた。
ダイヤトーンの2S305の音は聴いていない。
62号に登場した、他の日本のスピーカーシステムもとうぜん聴いてはいない。
そのときは、そのことをそう残念には思っていなかった。
でもいまは、日本のスピーカーシステムをこれだけ集めて聴く機会はそうはない。
ほとんどない、ともいえる。
聴いておきたかったなぁ、と思っている。