Date: 7月 21st, 2012
Cate: the Reviewの入力
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the Review (in the past)を入力していて……(続×九・作業しながら思っていること)

測定データを、なによりも重視する人たちは、昔からいた。
試聴記よりも測定データを載せろ、という人たちである。

ずっと昔には、メーカーがカタログに載せている測定データにはいいかげんなものもあった、ときいている。
だから、その時代においてはオーディオ雑誌が測定データを載せる意味合いは大きかった。
それが基本的な項目、周波数特性、歪率、それに出力であっても、だ。

だがメーカーもいつまでもそんなことをやっていたわけではない。
ずいぶん以前から名のあるメーカーが発表するデータにいつわりはない、といえる。
そして各メーカーのデータにおける差も小さくなってきている。
測定データにおかしなところのあるオーディオ機器は(まったくない、とはいわないけれど)、ほとんどない。

そういう意味では、オーディオ雑誌がいま測定を行うには、
以前とは違う意味合いが求められるし、そこに難しさがあるわけだが、
それでも、ごく一部の人たちは測定データにまさるものはなし、とでもいいたげであって、
中には測定データに大きな差がないから、音の差はありえない、という不思議なことを言い出す。

すくなくとも1970年代には測定データにはあらわれない音の違いを、
耳は聴き取っていたことは当り前のことになっていた。
アンプを例にとれば、使用パーツの品種による音の違いケーブルによる音の違いなど、
そういったことがらによる、測定データにはあらわれないにも関わらず音は違ってくる。

トリオのKA7500とKA7300の測定データを比較しても、そう大きな差はないはず。
KA7300は電源トランスから左右チャンネルで独立させている分、
セパレーション特性ではKA7500よりも優れているだろうが、
あとの測定項目においては、KA7500とKA7300の音の違い──、
つまりKA7500の開発・設計担当者は恋に悩み、KA7300の開発・設計担当者は新婚ほやほやであったこと、
こういう違いは、これから先、どんなに測定技術が進歩したとしても測定データにあらわれることはない。

なのに、人の耳は、その違いを聴き分けることができる。
測定データ、測定データ、とあきることなくいい続けている人たちは、
KA7500とKA7300に関するエピソードを、どう受け止めるのだろうか。

オーディオの楽しみは広い。
だから測定データだけに捕らわれてしまうのも、オーディオのひとつの楽しみといえばそうなる。
それでも、ご本人たちが楽しければそれでいいのかもしれないし、
まわりがそういう楽しみ方に口をはさむべきではないにしても、
やはりオーディオは音楽を聴くために存在していることを忘れてはならない。

測定データをどんなに眺めても、音楽は鳴ってこない。

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