ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その5)
1970年代にくらべるといまのケーブルの品種は、いったい何倍程度に増えたのだろうか。
ケーブルの会社もずいぶん増えたし、まだ増え続けている。
昔はオーディオ店に行ってはカタログを集めてきていたし、
オーディオ雑誌に載る広告も、いまとはずいぶん違ってスペックをきちんと表示してあった。
ケーブルは基本的に2つの導体から構成される。
つまりそこには静電容量が存在することになる。
だから1970年代のスピーカーケーブルのカタログには1mあたりの静電容量を載せているものが多かった。
いまは、どうなのだろうか。静電容量を表示しているケーブルは全体の何%なのだろうか。
静電容量はケーブルを長くすればするほど増えてくる。
静電容量という言葉からわかるようにコンデンサーと同じなのだから、
平行する金属の面積が増えれば増えるほど容量は増えるし、
その距離が近くなればなるほど、また容量は増えていく。
だから1mのケーブルと2mケーブルとでは、
同じケーブルであれば2mだと1m時の倍の静電容量になる。
30mになれば1mのときの値の30倍になる。
この静電容量はパワーアンプの出力に対して並列に、負荷としてはいることになる。
コンデンサーの性質として高域にいくにしたがってインピーダンスは低下していく。
静電容量が大きいほどパワーアンプにとっては負荷として厳しいものとなってくる場合もある。
30mもスピーカーケーブルを延ばすということは、こういうことも考えられるわけだが、
おそらく30mのスピーカーケーブルを提案した本田一郎氏も、
それを受け入れて試した中野英男氏も、スピーカーケーブルのこういう性質はわかっていたはず。
ここで思い出してほしいのは、本田氏は太いケーブルを30m引き延ばしたわけではない。
中野氏が書かれているように細いケーブル、ということだ。