ハイ・フィデリティ再考(続×十三・原音→げんおん→減音)
スレッショルドの800Aが登場したころ、
カナダのデイトンライトがガス入りのコンデンサー型スピーカーシステムを作っていた。
このガスのおかげで従来のコンデンサー型スピーカーよりも高圧をかけることが可能になったとかで、
コンデンサー型としては異例なほどのエネルギー感の再現が可能であった、らしい。
ただデイトンライトのXG8はパワーアンプをそうとうにより好みするスピーカーだったようで、
XG8を満足にドライヴできるアンプは、当時はほとんどなかった、ともきいている。
スレッショルドの800Aの開発時のエピソードして、ネルソン・パスが語っている。
パワーアンプにとって厳しい負荷であったXG8をパラレル接続にしている人を紹介されたパスは、
800Aの試作機を携えてサクラメントからサンフランシスコまで車で向ったそうだ。
800Aの試作機の保護回路の電流制限値は15Aに設定していたところ小音量時でもすぐに保護回路が働いてしまう。
それで一旦サクラメントにもどり、25Aに設定しなおしてもうまくいかない。
そうやって改良を800Aの試作機にくわえていくことで、最終的には保護回路を外すことが可能になり、
XG8のパラレル接続を問題なくドライヴできるだけでなく、
音質的にもそれまでのアンプでは得られなかったレベルに達することができた、そうだ。
こういうこともあって800Aはアメリカではデイトンライトの使い手から評価を寄せられたそうで、
またデイトンライトのXG8のために800Aは開発されたという人もいたそうだ。
このことと、STASIS1がカッティング用のアンプとして使われたこと、
さらにSTASISシリーズの1984年ごろのS/500IIは核磁気共鳴を測定するための機器として、
ある大学の研究室に20台納められた実績をもつこと、
これらのことからいえるのは、パスがいたころのスレッショルドのアンプは、
条件の厳しい負荷を問題なくドライヴできる性能を持っていた、ともいえる。
ネルソン・パスがどんなシステムを使っていたのか。
スレッショルド時代は、マーチンローガンのコンデンサー型に、
10インチ口径のウーファーを8本を使ったサブウーファーを足し、しかもこのウーファーにはMFBをかけている。
これが1984年ごろのことだ。