Date: 4月 22nd, 2012
Cate: 素朴
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素朴な音、素朴な組合せ(その20)

それだけにカルショウの録音への意気込みは、すごいものだったと想像できる。
そして意気込みが強すぎてしまうと、
「意を尽くす」よりも「意を凝らす」ことのほうが前面に出てきてしまうのかも知れない。

誰しもがいい音で音楽を聴きたいと思うから、いい音を出したい、と思うわけだが、
いい音を出してやろう、と意気込んだときに、その音は素朴から遠ざかってしまうのではないだろうか。

いい音を出したいという気持は大事なことであっても、過剰な意気込みになってしまえば、
なにか違うものを生み出してしまう、そんな気もする。

それは時には音を表現する上での冗長性へ、とつながり関係していくのではないだろうか。

音だけの再生の世界において冗長性を否定はしない。
けれど、素朴な音とは、冗長性を有しない音、さらには冗長性を必要としない音だと思ってきている。

ここまで書いてきて、ふと頭に浮かんできたスピーカーユニットがある。
フィリップスの20年以上前のフルレンジユニット、AD7063/M8だ。

AD7063/M8は7インチ(17.8cm)口径のダブルコーンのユニットで、
フレーム形状は八角形で、5インチ(12.7cm)口径のAD5061/M8も同じフレーム形状である。
フィッリプスにはこのふたつのフルレンジの他に、
9インチ口径のAD9710/M8と12インチ口径のAD12100/M8があり、このふたつのフレーム形状は円。

このフレームの形状の違いは、ユニットの特性の違いを表していて、
八角形フレームのAD7063/M8とAD5061/M8は推奨エンクロージュア容積は、25リットル以下と7リットル以下、
円フレームのAD9710/M8とAD12100/M8は、30リットル以上と50リットル以上、とカタログには記載されている。

八角形フレームのユニットはf0がやや高めで、インピーダンスカーヴのf0の山が低い。
円フレームのユニットはf0も低めで、インピーダンスのf0の山も高い。
そういう違いが、推奨エンクロージュア容積の「以下」と「以上」の違いになっているわけだ。

私が耳にしたことのあるのは八角形のユニットだけで、円ユニットのほうは聴いたことがない。
だから、私が書いていくフィッリプスのフルレンジのことは、八角形フレームのユニットの方だ。

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